第144話 もう一つの悪意 その1
◆
「そんで週末はお楽しみだったわけ?」
「うん!! そうだよ!!」
文化祭実行委員会の放課後の集まり、そこで俺たちは文化祭の準備と並行して聡思さんの計画についても話していたのだが先日のレナさんの話に脱線していた。
「てかさアヤはそれでいいの?」
「何が~?」
「それって葦原を昔の女から譲られたみたいな話じゃん……悔しくないの?」
浅間の言葉は分からないでも無いが問題は当人が横で作業している上に、お前の彼氏のために資料を集めて危険な橋を渡っているのも忘れないで欲しいという点だ。
「はっ、咲夜ってさ……子供だね?」
「あぁん、どーいう意味よアヤ!!」
最近は少し調子に乗ってる綺姫が更に調子に乗っているし俺を見てドヤ顔しているのも気になる。そして可愛いなぁ……もう本当に!!
「男の過去をいちいち気にしてたらカノジョなんて務まらないよ?」
「なっ!?」
そう言ってペットボトルをプハァと一気飲みするのは妙に男らしかった。
「お~、アヤが大人な発言してる~、てか本妻の余裕?」
「煽るな、そして乗せるな海上」
最近は落ち着いていたが基本的に綺姫は調子に乗るとどこまでも木に上るタイプだしテンション次第で凄まじい行動を起こす。ぶっちゃけ勢いが凄い。だからコントロールする側としては大変だ。
「それにアタシだって須佐井を好きだったって最悪な過去が有るしお互い様かなって……星明だけを責めるのは間違い、そりゃ悔しいけどさ」
「今日は完全に負けたわ……アヤ」
「三人共、それより聡思さんの計画なんだが良いか?」
他の委員が帰ったのを見計らって俺は口を開いた。いや、そもそも赤裸々に話す三人を前に他の委員が逃げ出し気付けば四人になっていた。ちょうど都合も良いから俺は一気に話を進ませる事にした。
「うん、アタシ勝ったし良いよ!!」
「ぐぬぬ……まあ、聡思兄の話だし聞くけどさ」
俺は改めて周囲に人が居ないのを確認すると先日までの話をした。もちろんレナさん関連の話はカットだ。大事なのは四門さんの所で貰った資料で俺たちは先に中身を確認するために今日は持って来ていた。
「じゃあ資料を広げるぞ」
俺が数枚の資料を封筒から取り出し広げると綺姫と海上が反応した。それは須佐井姉つまり須佐井
「あっ、似てる……」
「本当だ、女版の須佐井だね……てか詩月さんともソックリね」
「そうだな、やはり姉弟という事か」
前に会った須佐井母は失礼だが三人ほど整ってはいない。だが三人は本当にソックリだ。まさか隔世遺伝でもしたのだろうか。強いて言えば須佐井父の方がまだ似ているとは思う。
「こいつが私の聡思兄ぃの童貞を奪おうとした悪魔ね!!」
「うわぁ……咲夜の目がマジだよ星明~」
色々とツッコミ所は有るが聡思さんは自分で童貞だとは言ってないと思うのだが、なぜ知っているのだろうか。そんな疑問は残ったが今は資料の精査が先だ。
◆
「しかし酷いな……さすがは須佐井の姉か」
「うん……正直絶句だよ星明」
資料には犯罪行為の
「こりゃホコリが舞い散るレベルね葦原とは違う意味でね?」
「うるさい。痛い腹しかないから言わないでくれ海上……」
「ねえ、葦原……このDL事件って」
浅間が言うと俺も何かが引っかかった。確かに聞き覚えが有る気がする。
「え? イベサーのDL……正式名『DEEP LOVERS』が起こした事件にも一部関与? 何か知ってるのか浅間?」
「うん、ウチらが小学生の時にニュースになってなかった?」
俺は覚えて無いが海上が覚えていたようで詳しく聞くと変な事件だった。当時のイベサーDL、そこが根拠地として使っていたクラブの入っているビルが突如大爆発を起こし事件が発覚したと資料ではなっている。
「爆発したのに証拠品だけは押収された?」
「なぜか証拠物件のPCや資料は無事で、そこから美人局やネズミ講をやっていたのがバレてDLは壊滅……同時期の『ストフリ』事件との関係も判明だって」
浅間が資料を読み進めると当時、三大イベサーと呼ばれる犯罪の温床となっていたイベサーが、その事件を皮切りに三つとも滅んだそうだ。須佐井姉の年齢なら中学生だろう。こんな危険な奴らと関係を持っていたのか。
「それは有名ね『ストリーム・フリー』事件、略してストフリ事件……この事件の一年後だったんだ……国立のT大生が中心人物ってのに驚いた覚えが有るわ」
海上が言うくらいには有名でDL事件より報道されたらしい。資料によるとその事件は件の学生らが中心になって大麻栽培と売買さらには違法薬物、俗に言う覚せい剤を売り捌きヤクザ顔負けの商売をしていたとなっている。
「なるほど、ジローさん達の商売敵だったから資料が詳しいのか」
「被害者も多かったんだ……女の子もいっぱい犠牲になってる」
綺姫には話していないが工藤警視に秘密にしろと聞かされた話では須佐井も薬物を大量に使い女生徒などを食い物にしていたそうだ。つまり薬物の出所はこの姉というのは疑いようが無い。
「こいつが最低な女なのは分かったけど聡思兄ぃはどうやって復讐するの?」
「それは……」
俺が浅間の疑問に答えようとした時だった。チャイムが鳴り響いた。とっくに下校時刻だった。
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