第137話 災いを呼ぶ名前 その2
「須佐井の姉って……本当なんですか?」
「ああ、詳しく話すよ」
綺姫も浅間の次に食い付いて止められなかった。聡思さんは秘密が半分バラされて固まってるし、こうなったら俺だけでもと口を開こうとしたら海上に肩を掴まれ、止められた。
「海上?」
「まず、聞こう葦原……」
そして目線でスマホを示されスマホを確認するとSIGNの通知は『出方を見たい』と表示されていた。俺も『分かった』と返し話を聞く事にした。
「どうやら納得してくれたようだね」
少しも納得はしてないが一応は頷いておく。どんな形とはいえ奴が関わっている以上は俺も情報を集める必要が有るとは思う。だから話を聞くだけだ。
◆
「まず俺としては卑怯でマナー違反だが我慢の限界でね、聡思くんの秘密を話す。だって君はいつまで経っても問題を先送りするからさ」
「それはっ、クリスマスまでに――――「何をする気なんだい?」
瑞景さんと聡思さんの応酬が始まった。秘密とは例のサークラの話だろうが相手が、まさか須佐井の姉だったなんて思わなかった。だが聡思さんには何か計画が有るみたいだ。
「いやっ、それは……別に――――「君の通う文化祭のミスコン会場で照陽の悪行を暴くんだろ? 違うかい?」
「っ!?」
そんな計画を企ててたのか、だが俺は一つ疑問が有った。何で他の大学に通う瑞景さんが知っているのかという点だ。
「……だけど仲間は選ぶべきだ、
「は? なんで瑞景さんが白幡先輩を――――「彼、君たちの計画を照陽に漏らしているからね、手の内はバレてるよ?」
「なっ、いや、そんな……」
話が分からないが今の会話で察するに須佐井姉に対して聡思さんや何人かで報復する予定なのは確実だ。だが事前に計画が漏れていたと、そんな感じだろう。そして裏切者が今、瑞景さんが言った人物のようだ。
「これ、彼のバイト先で二人が密会してる様子だ、ちなみに、この後にホテルに入ってる……意味は分かるな?」
そしてトドメに二人がラブホテルに入って行く様子が収められた動画を見せた。聡思さんは固まって「先輩……マジかよ」と呟いている。だが俺と綺姫は別に気になる点が有った。
「ね、ね? 星明、ここレビューしたホテル、シャワーが綺麗だったとこ!!」
「ああ、綺姫がガラス張りの風呂に驚いて体を洗ってるのを恥ずかしがってた時だね……懐かしいな」
「あの時は星明に一方的にされてたから恥ずかしかったよ~」
あの時は自分の気持ちを認める事が出来なくて綺姫を義務的に抱こうと頑張ってたなと互いに思い出していると、ゴホンと俺達の回想は瑞景さんに中断されていた。
「「すいません……」」
俺達が謝ると空気が弛緩した。海上は呆れ顔で聡思さんはジト目、そして瑞景さんは苦笑していたが一人だけ硬直した後に動き出す者がいた。もちろん浅間だ。
「そ、それより、ホっ、ホテルって、そ、そそそ、それって」
「咲夜、あんたには刺激強い話だし耳塞いでても良いわよ?」
「聞く!! 聡思兄ぃの事だし、そもそも聡思兄ぃは須佐井の姉に何をされたの? それを教えて!!」
聡思さんが「それは……」と言葉に詰まっていると助け舟を出す形で口を開いたのは瑞景さんだった。今、完全に場を支配してるのは彼だ。
「ここまでバラしておいて言うのもアレなんだけど、場所を移さないかい? さすがに目立つ」
すぐに会計を済ませると六人で店を出てテーマパークも出ると車で向かった先は当然ながら俺のマンションだった。
◆
「粗茶ですが……」
「アヤ、あんたどうしたの?」
全員にお茶とお菓子を出しながら前回、六人で集まった時とは明らかに違う綺姫に浅間がポカンとして海上も珍妙な者を見る目を向けている。
「お義母さまから将来お客様にお茶を出す時のマナーとか教本とか、あと、その秘書検定とか受ける時の練習って、言われて……」
そして綺姫への教育も初めていたのが我が義母の静葉さんだった。もうガッツリ綺姫を囲い込む気満々で後は父を説得するだけと息巻いている。
「そ、そう……あんたが秘書?」
「うん、だって~、星明はアタシが傍に居なきゃダメだし、将来の事を考えたら星明の隣でアタシが静葉さんの役目を継がなきゃ……もう!! 言わせないでよ~」
バシバシと海上をトレイで叩いてる綺姫が照れてて可愛い。エプロン付けてトレイとか完全に新妻状態だった。
「お前、ほんとに学生か? これどう見ても結婚してるよな?」
「まあ、婚約してるんで実質的に結婚ですから」
俺が言うと「きゃ~!!」と照れてる綺姫だが、この流れで唯一、真剣な表情のままなのが浅間だった。そして浅間は真剣な表情を崩し涙を流して口を開いた。
「聡思兄ぃ……お願いだから全部、私に話してよ……お願いだからぁ……」
「ああっ、いや、咲夜……はぁ、分かった。お前を泣かせてまで隠す気は無い」
浅間が目の前でボロボロ泣いてメイクが崩れてパンダ状態になるのを見て、遂に聡思さんは自分が騙されたこと、サークラの被害に遭ったこと、そして騙された相手が須佐井 照陽だという話を全て吐き出した。
「そうだったんだ……」
綺姫が言うと海上も驚いていた。女子組は知らない話だから当然だろう。そして最後に聡思さんは浅間の顔をタオルで拭きながら言った。
「こんな、こんな情けない奴がカレシなんて嫌だろ……それ所か幼馴染なのも……」
「…………ふぅ」
浅間が沈黙の後に深い溜息を付いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます