第135話 トリプルデート その2
「ミカ兄ありがと、でも何で別行動を拒否ったの?」
「そうですよ後で連絡取り合えばいいじゃないですか」
だけど本番はここからだ。海上と俺の追撃は今ここから始まる。素直に話すとは思えないけどストレートに話を聞いて行く必要が有る。だって今の俺には時間が無いからだ。
「そうかな? だって六人で来たからさ……」
「でも、いつものミカ兄なら空気読んでくれるし……何か変」
だって今の俺の隣には綺姫が居ない。ある程度の距離を海上から取っているから発作は耐えられているが、それでも周囲は人だらけで地球上の半分は女なのだから俺の病気的にもキツい。
「そうか、ごめんごめん……次は気を付けるよ」
「はぁ、はぁ……それくらい、で……うなか――――「お待たせ星明?」
握られた手で俺の動悸や暴力的な衝動は収まった。後ろから手を握ってくれた大事な恋人のお陰だ。だから瑞景さんが今の俺を見ながら舌打ちしたのに気付かなかった。その瞬間は海上しか見ていなかった。
「ミカ兄……」
「どうした? 珠依?」
その二人の会話も完全に聞き逃していた。
◆
「星明、やっぱりトイレとかでも五分以上離れるとダメだね」
「はぁ、そうだね……本当にごめん綺姫」
今は計画通り一度、六人がバラバラになった後に海上・瑞景さんペアと合流し浅間たちを尾行している最中だ。でも俺は先ほどの出来事で足枷になっているのを改めて自覚し心中が複雑だった。
「大丈夫だよ、これから先ずっ~と一緒に居れば良いんだしさ」
「でもそれじゃ綺姫が……」
「ふふん、それが将来の……つ、妻の役割……だし!!」
「ありがとう、綺姫……」
言ってて照れたのか顔が真っ赤だ。だけど俺達にゴホンと、せきばらいする海上を見て俺達は気を引き締めた。瑞景さんが苦笑していて忘れそうになるがターゲットは瑞景さんだ。気を引き締めないといけない。
「はぁ、二人とも咲夜たちを見失わないようにね?」
「分かってるよタマ~、つい星明とイチャイチャしたくて」
綺姫の顔は満面の笑みを浮かべていて道行く人々、主に男が見て来る。綺姫は気付いてなさそうだから今度は俺が守らなくてはいけない。今回は瑞景さんを探る事がメインだけど大事な婚約者を守るのも俺の仕事だ。
「星明くんも大変だ」
「ええ、綺姫が居ないとダメな体ですから、それより前の二人を見失わないようにお願いしますね?」
そうだったねと言いながら瑞景さんは二人よりも俺と綺姫を見る方が多かった。スマホを見るとSIGN上では海上が瑞景さんから目を離すなと言って来る。だが、この後も上手く俺達はあしらわれ続けた。
「じゃあ、そろそろお昼?」
「そうだね綺姫、じゃあ俺たち二人を呼んで来ます」
だが今が最大のチャンスだ。このタイミングでは絶対に二組に別れざるを得ないタイミングだ。
「なら俺も――――「なら俺たちは席を確保してますよ、ね? 綺姫?」
「うん、二人をよろしくで~す」
だから俺は瑞景さんの声に被せるように言うと綺姫と一緒に引き返して、反対に海上が瑞景さんを連れて行こうと手を引っ張る。その時の焦った顔が凄く印象的で俺も綺姫も明らかに変だと確信した。
「オッケー、じゃ、行こうミカ兄?」
「っ、ああ……そうだな急ごう」
それからも合流した時、昼食時など俺だけが単独で動こうとしたり、俺が瑞景さんから離れようとする度にストーカーのように付いて来た。だから午後から別行動をしてから時間を置いて話を切り出すタイミングとしては完璧だった。
「あの、瑞景さん……何を隠してるんですか?」
「ミカ兄、正直に話して」
◆
――――綺姫視点
今日のデートは監視されている振りをした監視だったから色々と大変だった。星明も私よりも瑞景さんに夢中だったし、でも今日の苦労がやっと報われるターンがやって来た。いよいよ本番だ。
「何か皆が変だと思ったら、隠しごと……か」
「そうだよミカ兄」
そろそろ解散というタイミングで再合流した私たちは園内のカフェに入る。まだ家族連れやカップルが居る中で中央の席に陣取った私たちは五人で今日の瑞景さんの変な所を挙げて囲んでいた。さながら学級裁判だ。
「珠依が皆を誘ったのか?」
「うん、でも私、心配で……ミカ兄いきなり変になり過ぎだから!!」
私も星明が変なことしたら恐いし不安になるから分かる。いきなり別れようとか言われた時とか絶望感凄かったし、だからタマに協力した。
「その、アタシや星明のこと夏休みで助けてくれたの感謝してます、でも……」
「私や聡思兄ぃには興味無かったのは監視しててバレバレですよ?」
私と咲夜も続いて挙動不審な動きや、さらに瑞景さんの不審な動画を見せる。咲夜たちは尾行されてる振りをしながらずっとスマホで撮影してもらっていた。
「撮りやすかったですよ、だってこっちを見てないんすから瑞景さん」
「これは、なるほどな……つまり俺は罠にはめられたのか聡思くん?」
余裕そうな顔でアイスコーヒーを一口飲むと瑞景さんは落ち着いたのか口元に笑みを浮かべて対応する。余裕は有りそうだから八上さんが追撃をかけた。
「ええ、あんたは、あの夜から、いやその前から変だった、だけど悪人じゃねえ」
「その通りです。瑞景さん、俺が綺姫と婚約できたのは間違いなく夏に貴方がアシストしてくれたからです、出来れば俺は恩人をこれ以上、詰問したくない」
そして星明が言うと瑞景さんは溜息を付いた後にニヤッと口元を歪めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます