第133話 本当の疑惑の人物


 浅間の声が店内に響き何でそうなると聡思さんが言い返し場は大混乱する。だから俺は海上に許可を取って話をしようとしたが、その前に待ったが入った。


「お客様、他のお客様にご迷惑がかかりますので、お・し・ず・かに!!」


「「「「「はい……」」」」」


 このパターンは前も有った気がすると思いながら全員で大人しく店を出て最終的に俺のマンションに戻ることになった。




「もうアタシ達のホームだよタマ!! 大人しく白状して!!」


「だから嫌だったのよ……」


 溜息を付く海上の言い分も理解できる。理由は綺姫だろう。今の綺姫は俺の膝の上に座り首にガッシリ抱き着いて甘えてるからだ。


「どういう意味よ~!!」


「こうなって話し合いにならないと海上は思ったんだろ?」


「その通りよ葦原、それに咲夜はこれだし」


 そして綺姫より問題なのは浅間だった。帰り道もで聡思さんにグチグチ言っていたが俺の部屋に入ると爆発し半泣きで聡思さんをポカポカ叩きながら叫んでいる。


「聡思兄ぃが~、私を裏切った~」


「あ~、だから違うって帰り道でも言っただろ!!」


「小さい頃はアヤと葦原みたいなこともしてくれたのに~!!」


 今は手くらいしか握ってくれないと文句を言っている。それを聞いて俺は思った幼馴染の距離感とはそういうものなのか? なら綺姫と須佐井もこんな感じだったのだろうかと……イラっとした。


「アタシは手を握られたりとかくらいかな……小さい時に」


「そっか、でも気にして無いからね綺姫」


「じゃあ何で強く抱いてるのかな?」


 俺が抱き締める力を強めると逆に首に抱き着く力を強めてニヤニヤする綺姫の挑発に負けて俺は我慢出来ずに綺姫にキスをしていた。


「言ったよね? 俺も嫉妬はするんだよ?」


「うん、知ってる……だから全部上書きして……星明」


「もちろんさ」


 そして二度目のキスをしようとしたタイミングで海上が遂にキレた。


「こうなって話が聞けないからアヤと咲夜をハブしたの!!」


「「あぁ……」」


 俺と聡思さんも納得し二人して同時に声を上げていた。確かに真面目な相談をする時には邪魔になるだろうとは思う。


「分かった、じゃあ黙っていられないなら綺姫と浅間は奥の部屋に連れて行くから、これで良いか海上?」


「でも星明……」


「綺姫、夜はタップリ可愛がってあげるから我慢してね」


「ほんとに!? じゃあ今夜はお姫様コースがいい!!」


 そんなコース作って無いんだけどな……たぶん綺姫が勝手に好きな抱かれ方のシチュエーションを考えて名付けたんだろう。だが俺への視線は痛かった。


「あ~、じゃあ咲夜、お前も大人しくしてろ友達のガチ相談なんだからよ」


「タマには相談乗ってもらってるし、分かったよ」


 両者の態度に納得した海上は「じゃあ話すから」と言って語り始めた。




「改めてだけどミカ兄の様子が夏休みの時からおかしいのよ」


「うん、だよね」


「やっぱり~、アタシも思ってたよ」


 いきなり口を挟んだ二人を俺達が止めようとしたら海上が手で制すと続けるように頷いた。


「だってアタシがバニーのバイトやってる時とか無駄にタイミング良かったり、星明とアタシが迷ってる時とか何か全部を見られてる感じだったし」


「しかもアヤと葦原の行動にケチ付けたと思ったら、逆に勧めたり変だった」


「そうなの、それでこのメモよ」


 そして海上は全員に見えるように先ほどの画像を表示したスマホをテーブルに置いた。俺は二度目だが皆は初見で真っ先に反応したのは聡思さんだった。


「このYって俺か?」


「そう思って葦原を使って連絡しました……」


 そういうことだったんだと綺姫が俺の隣で言うと次は浅間が反応した。


「なら、このSって私ね、YとSの妨害ってとこ」


「ああ、この日付だと俺が星明と天原にホテルに行くように言った時だ」


 他にも夏休みのバイトの期間中に違和感を感じた日付に瑞景さんが動いている痕跡が有った。その中には例のモニカさん達に出会った時のことも要注意となっていた。


「ここもYなんだけど……モニカさんならMだよね? 別の場所はそうだし」


 そして数日後のアルカ君を送った日の箇所はMとYになっていて謎だ。だが驚いたのは、そのすぐ下の箇条書きだった。


「え? 予定通り……四人が来店?」


「二と七が対象を誘い出すのに成功……?」


「これ、なんなの星明?」


 綺姫と浅間が読み上げる文字を見て二人は分からないと言う顔をしているが聡思さんはハッとした顔をして俺を見た。だから俺も頷いて海上を見る。


「そういうことか……全て仕組まれていたのか」


「どういうことよ葦原?」


 浅間が不思議そうな顔で言うのを見て俺は全員を見回して言った。


「二郎、七瀬……四人、全部あの夜と一致する……そうだな海上?」


 このメモ書きが本当なら夜に二朗さん達が来た時、その前の七瀬さんとの再会さえも仕組まれていた可能性は大いに有ると思う。


「だから葦原たちに話を聞きたかった、いや違う話を聞いて欲しかったんだと思う」


 落ち込む海上に俺を含め一同が沈黙している中で最初に動いたのは綺姫だった。俺の腕の中からスルリと抜けると綺姫は海上に尋ねた。


「それで具体的にはどうするのタマ?」


「ミカ兄が逃げられない状況を作る……トリプルデートに付き合ってみんな!!」


 こうして瑞景さんから真相を聞き出すためのトリプルデートが決まった。

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