第132話 三人が集まる理由
◆
――――星明視点
「綺姫、じゃあ行って来るね」
「う、うん、でも本当にアタシはダメ?」
「海上が言うには俺に相談が有るらしい、たぶん姫星祭関連だと思うけど……大丈夫すぐ戻るから」
別に悪いことをする訳じゃないが綺姫以外の女と外で会うのは少し悪い気がした。だが同時に会うのは聡思さんも一緒だし問題は無いと思えた。それよりも俺は海上のSIGNの通知を見て放っておくことは出来なかった。
【やっぱりミカ兄が最近おかしい何か知ってること有ったら教えて】
これが瑞景さんについて初めてトリプルデートの話題以外で出た話だ。そして似たような返信が何回か有ってからの昨日がこれだ。
【ミカ兄の様子が明らかに変とにかく相談に乗ってくれない?あとアヤには知らせないで欲しい聡思さんにも話を聞きたいんだけど連絡取れる?】
海上には何度も世話になった。綺姫に告白できたのも須佐井から守り切れたのも海上の尽力のお陰で瑞景さんの様子が変というのも会って直接聞くべきだと思った。とにかく会って話した後に綺姫からも意見を聞けば良いはずだ。
そんなことを考えながら俺は指定された喫茶店へ急ぐ。そこは以前にも利用したことのある店で家からも離れているから安心だ。だが気になったのは海上が綺姫や浅間にも隠す理由だ。その点も色々と聞く必要が有りそうだ。
「待たせたな海上」
「ううん、まだ八上さんも来てないし」
私服の海上は学校とは雰囲気が違う。このスポーティな服装を見るのも久しぶりな気がする。小麦色の肌に映えるように白ベースの明るく動きやすい服装だが反面、露出度が高いから綺姫には着せたくないと思う。
「それで具体的な内容を聞きたいんだが」
「うん、まず夏休み前から変だったんだミカ兄」
そこで海上の話をまとめるとこうだった。不審な点としては俺と綺姫の動向を異様に気にしていた点で海上が言うには自分から相談したとはいえ恋人の友人カップルに接する態度にしては異様だったらしい。
「でもそれは単純に瑞景さんが良い人だという話では?」
「でも度を越してる、会う前からあんたとアヤを知ってたみたいで」
そして海上はそれを示す証拠として瑞景さんの部屋に行った時に盗み見た手帳の中身の一部を写真に撮っていた。それを見ると異常の意味が分かった。
「なるほどな、確かに変だ」
夏休みの俺と綺姫の行動スケジュールが分刻みでメモされている。それには下書きと書かれていた。しかも俺が須佐井に殴られた日の前後に何度も二重線を引いたりしてる箇所が有って、そこにはYというイニシャルと”利用可”という文字が有った。
「でしょ、それでこのYなんだけど」
「これって……まさか聡思さん、八上さんのYってことか?」
「うん、だから相談できるのは二人しか居ないと思ってさ、それにアヤと咲夜をウチの彼氏の問題で巻き込みたくないし」
「そうか、何で俺に相談だったのか理由が分かったよ」
そんな話をしている間に聡思さんも合流して俺たちは三人でいよいよ本格的に話し合おうとした時だった聡思さんが気まずそうに口を開いた。
◆
「二人とも……特に星明なんだが」
「なんですか聡思さん?」
「あれ気付かなかったのか?」
斜め後ろを見ろと言われ俺と海上が見ると怪しげな二人組が居たが問題は片方の頭に付いている紅い珠の付いた髪飾りだった。あのかんざしを付けている可愛い婚約者を俺はこの世の中で一人しか知らない。
「俺の
「葦原ねぇ……てか尾けられた? それと少しは反省して」
だが海上の言葉を俺は否と否定する。家を出る前も普通に送り出してくれたし何より目的地を言ってないから追跡するなんて不可能な筈だ。
「俺かと思ったけど先に居るしな、てか咲夜もあんなバレバレな恰好して」
聡思さんが呆れたように言っていると二人の所に明らかにナンパ目的の男達が来て二人は顔だけは余裕な態度だったが震えてこっちを見ていた。だから俺と聡思さんは同時に立ち上がる。
「星明行くぞ、悪いな海上」
「もういいです、こうなったらウチも覚悟決めます」
そして数分後、綺姫と浅間は俺たちのテーブルに合流した。二人はバツが悪いのか揃ってムスっとしていて綺姫のその表情も可愛い。
「アタシ悪くないし~、星明が……何も嘘は言って無いけど……でも」
「私は、ほら何か面白いの見れるかも~とか……うん、その……野次馬根性で」
綺姫は先ほどのナンパが恐かったのか俺にピッタリくっ付いて言い訳していた。浅間も当然のように聡思さんの隣に座って服を掴んでいる。今さらながら二人は見た目がギャルっぽいだけのJKなのだ。
「普段はウチがああいうの蹴散らしてたからね、二人の時はこうなるんだ」
「そ、そうだよ!! 今回はタマが悪いよ!!」
「そ、そうだし……てか聡思兄ぃの用事ってタマと会う事だったの!?」
二人の言葉に俺と海上は沈黙してしまったのだが、ここで空気が読めずに放った聡思さんの一言が火に油を注いでしまった。
「ああ、だけど俺も気になってたからな」
「ええっ!? それってタマのことが!? サイテー!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます