第十四章「広がる二人の関係」

第131話 疑惑の二人?

――――綺姫視点


「うん、大丈夫……それに安いのなら気軽に買ってもらえるよ~」


「でもアヤ先輩……私のカレ意外と鈍くて、まず祭に誘ってくれるか心配で」


 今の私は迷える後輩を指導する先輩。そう恋愛指南をしている最中なのです。


「問題無し、星明も鈍いけど買ってくれたし勢いで押し切っちゃえ!!」


 横で「うっ」と星明が呻いているけど構わず宣言すると「王子様は鈍感系~」と言いながら後輩女子は帰って行った。


「はい、次の子、恋愛相談は左で姫星祭関連は右ね~」


 そして列整理している咲夜がゲンナリした顔で私達を見ていた。ちなみに左は私で右が星明なんだけど私の前には長蛇の列が出来ている。星明の方には三人だけ……勝ったよ!!


「はい葦原、これ確認よろしく」


「ああ、分かった……海上いいか?」


「なぁに?」


「この列の解消はいつ終わる?」


「あんたらの惚気が終わるまでじゃない?」


「なるほど永遠か……」


「くだんないこと言ってないで仕事しな~」


 横では星明とタマが軽快なトークを繰り広げて、これも私の恋愛相談の列が長引く原因だったりする。意外と二人の喋りは面白いし今みたいに星明からサラッと本音も聞き出してくれるから助かってる。


「星明~!! 大好き~!!」


「あっ、綺姫!? 仕事、仕事終わらないから!!」


 思わず抱き着いてほっぺにキスをすると周囲がザワ付く、こんな感じで私達の放課後は過ぎて行く。ちなみに恋愛相談が急激に増えた理由は私が原因だった。


「いやぁ、もう毎日が特ダネの日々ですよ~」


「もう、小野っちはお喋りなんだから~」


「すいませ~ん、今のお気持ちは?」


「幸せで~す♪」


 事件の影には彼女有り、いつもの元新聞部その他たくさんに所属していた小野っちだ。私達が登校したと同時に変化に気付いて即座にインタビューされ昼休みには私達の新たな関係は校内中に知れ渡っていた。


「おのれ小野めぇ……余計なことを」


「これは葦原実行委員長はお怒りですね~、しかし取材対象に恨まれるのも私達の宿命、甘んじて受けましょう!!」


「何言っても無駄よ葦原、諦めな」


 タマが言うと「そんな~」と言ってる小野っちを見ながら夕暮れ時、相談も陳情も明日に持ち越しで今日も二人でお家へ帰る。こんなに楽しく高校生活が過ごせるなんて思わなかった。どんどん星明との思い出が増えて過去は色褪せ消えて行く。


「綺姫どうしたの?」


「今夜は肉じゃがとカレーどっちにしようかな~って思ってね」


 思い出は色褪せないとか言うけど嫌な思い出は、さっさと色褪せて消えた方が良いと私は思う。過去よりも未来、昔の幼馴染よりも今の婚約者が大事、だからカチューシャはもう付けないだろうと私は新しい絆の品かんざしをそっと撫でた。




 それから数日後、私は咲夜と二人で星明を追跡していた。どうしてこうなったのかと言うと休日の昼下がりに星明が私とデートもエッチもしないで出かけるというからだ。しかもタマと会って来ると言われた。


「アタシも一緒にって言ったのに……」


 心配になった私は同じく暇してた咲夜に連絡し駅前で合流して追跡アプリで星明を追跡することを決めた。前に星明が私のスマホに入れたアプリを私もコッソリ星明のスマホにインストールしておいたのです。


「葦原は呼ばれたのは自分だけだからって言ったんでしょ? 怪しいわね」


 咲夜の言う通りでタマがそんなことを言うとは思えないし、可能性としては星明が嘘を付いてることだと思う。


「だって星明はアタシを守るためなら何でもしちゃうから、悪いことや嘘なんて平気で付く……ここは婚約者、そう婚約者として止めなきゃダメなのです!!」


「んなこと言ってると見失うわよ……って居た!!」


 帽子とサングラスをかけた咲夜と同じような恰好をした私も後を追いかける。追跡アプリで到着した場所は以前にも工藤警視に連れて来てもらった喫茶店だった。こっそり入店すると、そこには予想外な光景が広がっていた。


「――――なるほどな、確かに少し変だ」


「でしょ、――――分からない?」


「これってまさか――――の――ってことか?」


「うん、だから――――できるのは――しか居ないと――――」


「そうか、――相談と――――理由が分かった」


 どうしよう普通に星明がタマの相談に乗ってた。しかもタマが呼び出したのも雰囲気的に本当っぽいし、じゃあ何でタマは私や咲夜じゃなくて星明を呼んだんだろう。


(ちょっと普通にマジの相談じゃね?)


(でもタマがアタシ達に内緒って変じゃない?)


 そんな風に少し離れた席で様子を見る私たちに店員が注文を取りに来たから手早く飲み物だけ頼んで監視を続ける。


「だが――――なら、やはり――――」


「うん――――困って――――」


 でも声が小さくて聞き取れない。やはりすぐ隣のボックス席にすべきだったかもと思うけど今さら無理だし困った。でも更に困った状況になったのは次の入店して来た男性客の存在だった。


「おっ、いたいた葦原それに海上、待たせたな?」


「こっちです聡思さん」


「すいません八上さん……」


 そこに現れたのは咲夜の暫定カレシの聡思さんだったからだ。いよいよ私達は混乱した。だって私達の彼氏をタマが呼び出してるんだから状況がサッパリ分からない。

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