第123話 他人の恋路は蜜の味? その1
綺姫が絶叫を上げた後に「小娘共め……」と少女達を睨み付けている。年下に何を言ってるんだと口にしようとしたが目付きが尋常じゃない綺姫にビビッて思わず一歩引いていた。
「え、お姉さん誰ですか?」
「こう君、この人は何なん?」
だが凄いのは相手もだった。綺姫の行動をアッサリ流し
「えっと兄さんの知り合っ――――「星明の婚約者で運命の恋人の天原 綺姫でっす!! 小娘共じゃなくて……少女たちよ!!」
なんか口調が変になってるからいよいよ危険だ。まるで世界の半分を渡しそうな魔王のようだと思いながら横に行って頭をポンと撫でる。
「綺姫、落ち着いて……えっと君達は香紀の知り合いかな?」
「は、はい!! お兄さま!! 私は工藤
「は? 梨奈あんた、え……えっと秋津 海咲、10歳よ」
なんか聞き覚えの有る苗字だと思っていると商店街側から歩いて来る一団が見えた。女性が三人に男の子が二人で男の子は浴衣姿だった。
「よし兄ぃ~!!」
「よしく~ん!!」
なるほど全員が香紀の知り合いのようだ。そして苗字から察するに兄弟かと見ているが肝心の綺姫が男の子達の浴衣姿を見てボーっとしていた。
「綺姫?」
「あっ、ごめん……何か懐かしくて」
「懐かしい?」
「前に祭の話したでしょ? それ思い出してさ」
昔の須佐井を思い出したのかと内心は複雑だが気にしたらキリが無い。俺は今の綺姫を受け入れて一緒にいる。そもそも奴はもう日本に居ないし今頃は地球の裏側で更生中だから関係無い。
「じゃあ過去は忘れて今を楽しもう」
「あっ、うん!!」
こんな過去の思い出なんて今の俺には、いや俺達には少しも障害にならないと内心で複雑な感情を抱きながら綺姫の手を握り返した。
◆
「なんか凄いことになってるけど、まず挨拶!!」
やって来た大人三人組の内の一人の愛莉さんが開口一番言った。両サイドの竹之内先生と前に会った工藤梨香さんも苦笑している。
「私もうしたから母ちゃん……いたっ!?」
「黙んな海咲、ほら大輝から!!」
先ほど自己紹介した海咲ちゃんが痛そうに頭を押さえて悶絶している横で青の浴衣姿の男の子が一歩前に出て大声で名乗りを上げた。
「俺、秋津 大輝、小6だ……です!!」
「えっと、秋津海咲……てか二度目だし」
二人を見て俺がよろしくと言うと大輝くんは快活に答え海咲ちゃんは頭が痛むのか少しテンションが下がって答えた。苦笑しながら二人に俺と綺姫も名乗ると入れ替わるように別な男女が出て来た。
「今度は私達ですね改めまして工藤梨奈です。お兄さま、お姉様」
俺がよろしくと言うと綺姫は即座に「合格」と謎の判定を下していた。何が合格なんだろうかと思ったが、ここは流して次の一番年下の男の子だ。
「工藤
「工藤さん家は合格でっす!!」
「だから何が合格なんだ綺姫!!」
遂にツッコンでしまったが梨奈ちゃんは「よし」と言って反対に海咲ちゃんはチッと舌打ちしていた。思わず横を見ると香紀も不思議そうにしている。
「こっちの話だからね、二人とも?」
「「ね~」」
すると早くも女子だけで固まり出した。さすが綺姫だ年下でも女子ならすぐにまとめるのは陽キャ筆頭だと感心する。そんな話をしている内に静葉さんも戻って来て全員で商店街に移動となった。
「今年で六回目よ」
「じゃあ六年目ですか?」
商店街の中も普段とは違って飾り付けもされていて午前中に来た時は気付かなかったが
「ええ、例の『空飛ぶ城事件』の翌年からね」
「ああ……でもあれ直前の事件も全部トリックって話ですよね?」
俺が言うと曖昧に笑っている。霧華さんも当時は大学生だったらしく都内での事件で自分もバイト先で見たニュースを覚えていると話してくれた。
「星明、空飛ぶ城事件って何?」
「えっと七年……いや八年前かな? 俺たちが小学生の頃の話だよ。俺は中学になってからネットで見た程度なんだけど陳腐な話さ」
その年の年末年始にかけ不可解な事件が日本国内で続発した。それは変な鎧姿の仮装をした集団の出現から始まり陰謀論好きなネットのまとめサイトやSNSの動画がメインで広まった。
「うっ、う~ん、八年前か、そういえば夏休みに咲夜とタマとも話したかも……」
「そっか、それで高校生が勇者とか言って世間を騒がしたり他にも国会で爆発テロ、おまけに変な魔法使いも出たりのお祭り騒ぎだったらしいんだ」
そんな大混乱のラストが日本上空に突如現れた空飛ぶ謎の城だ。だが数年後に明かされたのは全て政府の仕業で有事の際のパニック行動に関しての検証実験だと発表されたのだ。
「そんな大変なことが……」
「陰謀論好きは今でも本当だと言ってるらしいよ」
肝心の動画は全て当時の最先端のAR技術と発表された。技術提供とデータの収集をしていたのは千堂グループの関連会社で調べた当時は本当にどこにでも関わっていると感心したものだ。
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