第95話 葦原家の過去 その1
◆
――――綺姫視点
「愛の勝利~!!」
「そ、そうだね……」
星明が少し引いてる気がするけど気のせい? 香紀くんは色んな意味でガックリしてご飯を食べ終えると「負けました」と言ってソファーの上でいじけていた。
「少し……やり過ぎた?」
「かもね、俺が相手してくるから綺姫は……」
「じゃあ私とお話しましょうか、男は男同士、女は女同士でね」
静葉さんもとい将来のお母様のお誘いを断る選択は私に無い。星明も積もる話も有るだろうから香紀くんに返してあげよう。
「兄さん!!」
「色々と話すか?」
「うん!!」
そんな二人が二階に行くのを見送ると私はお茶を淹れてくれた静葉さんと二人での話になった……緊張します。
「そうそう、今さらだけど避妊だけはしてね」
「えっ!? そこからですか!?」
「ええ、お願いだから高校だけは卒業してね……」
こんなに心配してくれるのが本当に義理のお母さんなのか凄い不思議だった。だって私の実の親は「何とかなるから中退でも良いのよ~」とか言ってたし私も星明と一緒に生活するまではテキトーに将来は就職と考えていた。
「はい……でも、星明って避妊だけは完璧で今まで一回しかミスしてないです!!」
「その一回は大丈夫なの?」
「えっと、た、たぶん……」
私の返事に静葉さんが今日は予定が一つ追加ねと言った後、すぐに気を取り直すと今までとは別な意味で真剣な顔つきに変わった。
「さて、それより話しておきたい事が有るの……綺姫ちゃんを見込んでね」
「なんでしょうか?」
「うちの、いいえ、この葦原家の過去を話したいの」
それはつまり星明の過去という意味だ。断片的に聞いていたし気になっていた。星明や周囲の人が言っていた星明のお父さんを変えたという話。たぶんそれが聞けるんだと思う。だけど安易に聞いていいのかな?
「でも、星明に許可もらって無いし……」
「私があなたに話したいの……お願い、あの子を、星明くんを支えて欲しいの……私じゃ何も出来なかったから、あなただけが頼りなの」
「でも……いいえっ!! 分かりました私で良ければ!!」
◆
私の答えに静葉さんは「ありがとう」と言って口を開いた。最初は星明が生まれる前の話で実家の病院の話と前置きし始まった。始まりは星明の曽祖父つまり曽お爺ちゃんの興した小さい医院だったそうだ。
「そこから二代目つまり星明くんのお爺さんの代から急激に大きくなった」
「星明のお爺ちゃんが病院を大きく……ですか」
「ええ、それが間違いの始まりなんだけどね、まず星明くんのお爺様つまり先代院長は一言で言うならやり手よ……昔から優秀だった」
間違いというのが気になるけど静葉さんは話を進めた。星明のお爺ちゃんはその頃から病院の方針で曽お爺ちゃんと対立して最後は創立者の曾お爺ちゃんを追放する形で院長になったらしい。
「親子仲が悪かったんですか?」
「そうね、最終的には……でも会ったこと無いけど先々代の院長が正しかったの」
話が見えない私は静葉さんがお茶を飲んだタイミングで疑問を口にしていた。
「正しかった?」
「ええ、うちの病院が大きくなれたのは悪魔の取引が有ったから、それを止めようとしたのが創立者で星明くんの曾祖父で排除したのが……」
「星明のお爺ちゃん?」
何かが有って二人は対立していた。そして星明の曾お爺ちゃんは敗れて病院を去った。それが今から三十年以上前の話だそうだ。
「そう……そして病院が大きくなったカラクリだけど裏で様々な悪事に加担し、最終的にとんでもないことをしていた」
「何をしていたんですか?」
「違法ドナーの密輸の斡旋や仲介、そして移植手術よ……」
「え? すいません……意味が分からない、です」
静葉さんの説明によると心臓とか臓器移植の手術などは本来なら順番を凄い待つらしく国でも厳重にチェックされ許可が無く行った場合には違法になるそうだ。
「今から十年以上前に地元の県警本部長と組んで臓器の密輸ルートを作ったのが星明くんの祖父で元院長だった……」
「そうだったんですか……あっ!? それで星明のお父さんが?」
「違うわ、この話には続きが有ってね、実はこの事件には警察と病院側それに実行役の組織も居た……蛇塚組って言うヤクザがね」
それって確かジローさんが昔いた組の名前じゃないのかな。確か星明が言ってた気がする。
「それって皆がグルってことですか?」
「ええ、でも解決にある組織が動いた。当時はまだ世界的に少し知られた程度の企業グループ、それが千堂グループ……そして当時の総裁代理の千堂七海その人よ」
「えっ!? T・レディさん?」
あの凄いお金持ちで赤いマスク付けてた女の人が警察とかヤクザを倒しちゃったの? 少し信じられなかったけど同時にあの人なら何かやりそうな気もする。
「そうね、当時は花の女子高生……そんな彼女が数年かけ組織を壊滅させた、それが私達の今いる
何かまた聞いたことある単語が出て来た。たしか瑞景さんがジローさんと話していた時に出た言葉だったような気が……。
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