第93話 突然の接触と出会い その3
「綺姫ちゃん、星明くんも早く来て~」
静葉さんの言葉に振り返ると玄関に静葉さん以外にもう一人男の子がいた。恐らく彼が星明の義理の弟くんだ。
「あ、綺姫?」
「大丈夫、任せてよ星明!!」
星明のカノジョとして、将来の義理の姉としても恥ずかしくない姿を見せるんだ。色々と気になることも有ったけど昨日スッキリしたから大丈夫。
「綺姫ちゃん紹介するわ、息子の
「初めま――――「兄さああああああん!! 兄さん! 兄さん!!」
なんか私の方アッサリ素通りされて横の星明に抱き着いてるんですけど……あれ? 血は繋がって無いんだよね? 普通こういうのって微妙な仲なんじゃ?
「ったく落ち着けよ香紀、久しぶり、背も伸びたな?」
「うん!! 兄さん元気だった? 去年一回しか会えてないし電話も出てくれないから心配してたんだ!!」
星明も私に向ける笑顔とは違ってて何か良い顔してる。少しジェラシー感じちゃうし……こういう女が入れない関係はズルいと思う。
「ああ、悪かった……これからは連絡する」
「気にしないで!! それより兄さん、この女だれ? てか兄さんに近付くなよ女、お前は知らないだろうが兄さんには特殊な症状が……」
しかも凄い懐いてる。あっ、そういえば前に星明が唯一、自分を庇ってくれたのが義弟だけだって言ってた気がする……今、思い出した。
「そ、そうだね……でもアタシは大丈夫だから」
「いやアンタが大丈夫でも兄さんが……え? に、兄さん!?」
なおも食い下がる香紀くんを引き剥がして苦笑する星明は私と手を繋いで彼に見せた。それだけで弟くんは固まって静葉さんは頭を抱えていた。地味に苦労してそうと思ったのが私の素直な感想だ。
「香紀、綺姫は特別だから大丈夫だ。心配するな」
「えっ……兄さんが、そんな……俺の兄さんが、兄さんが……」
「あ~、綺姫ちゃん少し良い?」
そう言って呼ばれた私は静葉さんに話を聞くと私が何となく思っていた事をズバリ宣言されてしまった。
「な、何でしょうか?」
「見て分かるようにね、あの子ブラコンなの……そりゃもうお兄ちゃん子で……」
実母の自分より星明のことを慕っているそうだ。それで限界に近かったから今回は私達を呼んだらしい。でもそれなら星明だけで良かったのではと言う私に静葉さんは続けて言った。
「一人じゃ星明くん来ないからこの家……でもあなたが一緒ならイチコロ!! もうあなたは我が家の救世主なの!!」
「そっ、そんなぁ……救世主でお嫁さん候補で将来は婚約だなんて~」
そう言って今度は私が静葉さんに抱き着かれていた。調子に乗ってついつい口が滑っちゃうけど少しくらい良いよね?
「あら、そこまで考えてたの? でも学生結婚はダメよ。ちゃんと星明くんが家に戻って、うちの病院に就職してからね、それまでは婚約者って形で良いかしら?」
え? なんか思った以上に話がスムーズに進んでる? とか思ってたら待ったをかける声が一つ。もちろん義弟くんだった。
◆
――――星明視点
「母さん待ってくれ!! 今の話は聞き捨てならない!! 兄さんの相手は将来の院長婦人だろ!! こんな女!!」
「はぁ、何言ってるの綺姫ちゃんほど良い子は滅多にいないわよ? お料理もすっごく上手だし昨日でファンになっちゃった」
待て俺の義理の家族共よ落ち着けと口が出そうになるが弟が止まらない。昔から少し向こう見ずな所は有ったからな。
「母さん基準だとそうだろ、なら俺が見る、え~っと天原さんだっけ? 俺と料理勝負してもらう!!」
「へ? その……お料理できるの?」
再婚してからも静葉さんは父の秘書業務を続けていたから家に帰るのは当然遅かった。だから俺達は自然と家事を分担し俺が追放されるまでは一緒に頑張っていた。
「男だからって舐めてますか? 家に居ない親と違って昔から家事は兄さんと分担してたんだ!! ま、あんたは知らないだろうけどね!!」
「お、おい……香紀そのくらいに……その話は」
今の話はまずい……綺姫にしていないし何より俺のカノジョの逆鱗に触れそうな話題だ。ほら、こっち見て怒ってらっしゃる。
「へぇ、星明って家事できたんだ? アタシ知らなかった、それであんなに汚してたんだ部屋も……冷蔵庫の中の物も腐ってたし」
「え? 完璧な兄さんが? 嘘を言うな!!」
このままじゃ俺の株が大暴落の危機だ。向こうでの生活がバレたら兄としての威厳が無くなってしまう。
「あ、綺姫……その、落ち着いて」
「そのことは後でゆっくり聞くとして……香紀くん?」
ふぅと胸をなでおろした俺だけど綺姫はニヤリと不敵な笑みを浮かべると俺の弟に話しかけていた。あれは何とな~く嫌な予感がする。
「何ですか?」
「その勝負乗った!! 将来のお
「綺姫っ!?」
やっぱり俺のカノジョのこういう時のノリは最高に良くて絶好調だった。
「じゃあ審査は私と星明くんがするわ~!!」
「静葉さん!?」
そして俺の義母もノリが良かった。何かこの二人って妙に馬が有ってるような気がする。だが俺は気付いていなかった屋敷の外から俺たち四人を見ている怪しい二人組が居たなんて少しも気付いていなかったんだ。
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