第47話 それぞれの事情とやらかし その3
「ぜんぜんダメだし……昔の私って地味でさ、困った時はいつも聡思
咲夜の話では進学前から八上さんはオタク趣味全開だったみたいだけど今みたいに卑屈で暗い性格じゃなかったそうで咲夜にも優しくて、何より今みたいにギャル嫌いでは無かったらしい。
「え? そういえばギャル系が好きなんじゃないの?」
「それが大学に行ってから何か有ったみたいで、私が今のファッションで部屋行ったら、すぐに止めろとか言ってウジウジしてて……人目も避けるようになって」
二人の家は隣同士で小さい頃から一緒だったらしい。つまり二人は幼馴染同士だった。それを聞くと須佐井の事を思い出して私の心も少し痛んだ。
「あ~、分かった……だから咲夜って葦原のこと目の仇にしてたの?」
私の胸の内を知る
「うっ……さすがタマ、うん。何か学校でも聡思
大学と家の往復だけで後は暗い部屋でパソコンと睨めっこの半引き籠りの八上さんと星明のコソコソと人目を避ける動きが似ていたらしくイライラしてキツく当たっていたというのが真相だった。
「謝る相手が違うから咲夜、でも大丈夫!! 星明なら許してくれる、だって昼でも夜でも私に優しくしてくれるから!!」
「よっ、夜って……アヤあんた真昼間から、なっ、なに言ってんの!!」
顔を真っ赤にしている咲夜は学校の時みたいに余裕が無い。なんか今わたし変なことを言ったかな。
「あ~、そうそうアヤ、咲夜って純粋培養のド処女だから下ネタ苦手だから気を付けてね、今まで必死で隠してただけっぽいし」
「えっ? あ、そっか、今までの経験談とかアドバイス全部ウソだったんだ!!」
そう言うと咲夜は地面にしゃがみ込んで顔を隠していた。なんか急に女の子っぽくなってるし、大人っぽいと思ってたのに私は色んな意味で驚きだ。
「そ~よ、それも嘘よゴメン悪かった……ぜ~んぶ雑誌とかネットとかで勉強して誤魔化してたのよ~!!」
自暴自棄になって叫んでいる咲夜を二人で落ち着かせると今度は急に八上さんのことで惚気始めたから気の済むまで聞いてあげた。結局ロッジに戻るのに時間もかかって星明たちに不思議がられたが、女子の秘密だと言って納得してもらった。
◆
――――星明視点
「ま、まあ……今まで陰キャって言いまくって、その、悪かったわね葦原」
「あ、ああ、別に問題無いが、何か有ったのか?」
どういう風の吹き回しなのだろうかと考えるが恐らく外で三人で話し合ったからなんだとは思う。だとしても展開が急すぎて俺は焦った。
「別に!! アヤのパートナーだし、関係ビミョーなままバイトとか出来ないからよ!! てか謝ってんだから流しなさいよ!!」
俺は謝られてるはずなのに途中から逆ギレされてるんだが言い返してもいいんじゃないだろうかと思うが俺が動くより前に綺姫が動いた。
「ほら咲夜、さっきはキチンと反省したじゃん、ね? それにあんま素直じゃないと……言うよ?」
「ううっ……分かった!! ごめんなさい葦原!!」
「うんうん、よく言えました~!!」
二人のパワーバランスというか関係性まで変わったように見える。でも綺姫が笑顔だし悪くない。それに浅間にも色々と言われなくなるのは俺の精神衛生上も助かる。
「調子乗ってるけどアヤ、こっちも秘密握ってんだからね!!」
「あっ……それは、そのぉ……あはは~」
とか思っていたが実際そこまで変わらなそうだ。隣の瑞景さんを見ると苦笑しているし何とか丸く収まりそうだ。でも相変わらず何が有ったかは俺には秘密らしく、そこだけは気になっている。
「いやいや、普通にどうしたんだ?」
「そっ、それは別に今はいいでしょ聡思
だがここで俺以上に蚊帳の外だった八上さんが口を開いた。そりゃそうだ納得行かないだろう。
「ま、それもそうか俺なんて……そうだ、今日から部屋分けるぞ……咲夜」
「えっ? なっ、なんで?」
しかし八上さんは浅間が怒鳴るとアッサリ引いていた。完全に想定外な顔をした浅間が対照的で俺も、いきなり何を言い出すのかと思ったが次の一言で納得した。
「いや、彼氏が出来たんだろ? いくら幼馴染でも、その、相手に悪いだろ」
「確かに二人が一緒なのはふしぜ――――「星明、少し静かに!! お願い!!」
「分かったよ綺姫、余計な事を言ったね」
どうやら気を利かせたつもりだった余計だったようだ。それに綺姫のお願いなら仕方がない黙ろう。
「あんたはあんたで髪切ってからキャラ変わり過ぎでしょ……」
「いい変化だと思うけどな……俺は」
さり気なく二人は全部分かってますよという雰囲気出してるなと見ていたが今は浅間と八上さんの話だ。黙ってると答えはしたが俺の中では八上さんの言い分の方が筋は通ってると思う。
「えっと、それは……だから、えっとぉ……」
「昔みたいに頼られて調子に乗って悪かったな……はぁ」
実際、浅間は困惑しているし八上さんの方も何か言いたそうだが飲み込んでいる感じだ。言いたい事が有るのならお互いの気持ちを言えば良いのにと思ってしまう。
「い、いや、それは違うし、てか陰キャっぽいのウザいから!!」
「ああ、だから今夜からは心配すんな、え~っと葦原、わりーんだけど今夜からバイト終わったら同室、頼むわ」
八上さんは俺達が浅間を探している間に準備を済ませていたようで、それだけ言うと先に行ってバイト先の鍵を開けておくと言い出した。
「えっ、で、でも……それは」
「お前は俺を陰キャだとかヘタレとか、あと幼馴染だって安心してるが、お前も今は彼氏持ちのなんだし少しは気を付けろ……ったく」
それだけ言うと今度こそ八上さんは一足先にバイト先へ行ってしまった。
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