第46話 それぞれの事情とやらかし その2
八上さんの言葉に海上が「うっ……」と詰まった。そして綺姫は純粋に疑問符を浮かべていて状況を理解していない。それは俺も同じで状況がサッパリ分からない。何が起きているんだ。
「えっと、とりあえずアタシは咲夜探してくるね」
「そ、そうね!! アヤお願い!!」
じゃあ俺もと後を追おうとするが瑞景さんと海上に止められ外に連行される。おかしい今回は何も対処を間違ってないはずだ。振り返るとどこか複雑そうな雰囲気の八上さんに見送られ俺たちもロッジの外に出た。
◆
「ここまで来れば安心ね、ミカ兄」
「ああ、しっかし参ったな……」
二人は周囲を確認すると一安心といった感じだが俺は困惑しっぱなしだ。そもそも俺まで連れて来られた理由が分からない。
「それで事情は話してくれるのか?」
「あ~、悪い葦原……いや、ほんと迂闊だった。でも、そもそもアンタがアヤと朝までヤリまくりなのが悪いんでしょ!!」
朝の
「それについては俺にだって言い分が有る」
「なっ、なによ、元は陰キャの癖に~」
だから思わず口が出る。大体、俺は今回は事情を話されてないから完全に蚊帳の外で二人だけで納得しているのも気に入らない。いつまでも調子に乗るな陽キャが、そんなに偉いのかよと気付けば俺は叫んでいた。
「よくも……よくも綺姫をあそこまで可愛くしたな!! お陰で緊張しっぱなしで、しかも夜は積極的で、あそこまで迫られたら俺だって限界だ!!」
そう俺は昨晩から髪型が変わり積極的になった綺姫に夢中だった。こう見えても陰キャで素人童貞という経験値だけは無駄に多い俺でも昨晩の綺姫は凄かったのだ。
「は、はぁ? な、何言って――――」
「あんな無垢な顔で……俺が色々と教えたとはいえ反則だ可愛すぎる……しかも健気で一生懸命で!!」
俺の言葉に珍しく焦っている海上に気分を良くしながら俺が次の一言を叫ぼうとすると瑞景さんまで慌てている。だが俺はもう止められない。
「いや落ち着けし葦原、そんなに叫んだら……」
「そうだ星明くん落ち着け、うしろ――――」
「俺は綺姫のことを愛しっ――――「どうしたの皆? なんか声きこえたけど~」
そこで後ろから声が聞こえ、サーっと血の気が引いて冷静になる。振り向くと後ろには欠片も気付いていない綺姫と顔を真っ赤にした浅間がいた。
「……ごめん、急に出て行ったりして」
「咲夜見つけたから戻ろうとしたら、みんなの声が聞こえて……どしたの?」
どうやら聞かれてはいなかったようだと胸をなでおろす。視線で海上たちを見ると二人も目で頷く。僅か一日足らずで二人とはアイコンタクトが取れるようになってしまった。友達のいない陰キャだった俺にとって凄まじい進歩だ。
「な、何でもない、少し浅間を探す方法で口論になって……」
「そ、そうよ、って咲夜はもう大丈夫な感じ?」
それに曖昧に頷く浅間を見ると目を背けられる。ここまで嫌われる要素はさすがに皆無だと思っていると綺姫が前に出て来ると口を開いた。
「あのさ星明と瑞景さん、少ぉ~し女子だけで話が有るんだけど、いいかな?」
「え? 何か問題が有るなら俺も――――「オーケー分かった星明くん行こう!!」
何でだという俺の疑問も虚しく瑞景さんの鍛え抜かれた肉体の前に俺は引きずられて行く。そういえば瑞景さんって何の仕事をしてる人なんだ? 社会人のはずなのに長期の旅行に付いて来れたりと今さらながら色々と謎だ。
◆
――――綺姫視点
「その様子じゃアヤに、ぜ~んぶ話したん咲夜?」
「う、うん……アヤもごめん、今まで嘘ついてて」
しょんぼりしている咲夜を見ると反省してるみたいだし私も二人に嘘ついたり今も騙してる所が有るから強くは言えない。それに何より秘密の恋は共感できる。
「いいよ今回は特別……でも驚いたよ八上さんのこと好きだったなんて……アタシ全っ然気付かなかった~」
「わっ、ちょ、声大きいしアヤ~」
慌てる咲夜は珍しいから、ついついイジっちゃうのは私も少し怒っているから。この事を三人の中で知らなかったのは私だけだった。
「タマも何で黙ってたの? アタシら親友だと思ってたのに……」
「あ~、それはタマは悪くないのアヤ、二人の時に私がうっかりね……」
二人の話では毎回みんなで恋バナしてた時から咲夜は色々と怪しかったみたい。私は全然気づかなかったけどタマ曰く話を盛り過ぎだったらしい。そして私が学校を休んでる時に咲夜が口を滑らせてしまったそうだ。
「でも咲夜が高校デビューのギャルだったなんて……」
さらに咲夜は中学までは普通の女子で八上さんがギャル好きだと知ったから進学と同時にギャルっぽく見た目をチェンジした高校デビューだった。
「ウチもそれには驚いてね、てかアヤは前の写真見せてもらった?」
「ううん、咲夜が恥ずかしがっちゃってさ~」
最後は二人で押し切って咲夜から進学前の写真を見せてもらうと今とは違う黒髪の可愛い女の子が写っていた。
「ううっ、恥いし……」
「可愛いのに……」
私は本心から言ったけど咲夜は顔を真っ赤にしたまま昔の自分を全否定していた。
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