第23話 事件発生 その3
「じゃあ詳しくは明日……そうだ綺姫、学校はどうする?」
少し強引な手を使ったけど最低限の綺姫の日用品は揃った。そのまま他にも必要な物を買って俺達は帰宅すると明日の相談に入る。今日の綺姫は無断欠席扱いになっていたから気になった。
「……実は明日も警察に呼ばれてるんだ」
「明日も……なのか、やっぱり大袈裟過ぎるな」
「うん……行かなきゃダメ、だよね?」
前にジローさんに警察の取り調べにも種類が有って任意は断れるから覚えておけと言われた事が有ったから断るのも手だろう。だけど後が怖い、警察に痛い腹を探られては俺も綺姫も困る。俺を含めて関係者全員が真っ当じゃないからだ。
「分かった、じゃあ綺姫に渡す物が有る、取り合えずはこれ」
「これって……スマホ?」
「ああ、これ俺のサブ用なんだけど俺は使わないから今日から綺姫が使って」
これは元々バイト用つまり株取引のために用意したものだ。俺に株や投資を教えてくれた人にスマホは二台持ちが便利だと言われ用意したが使うことが無く気付けば宝の持ち腐れ状態になっていた。
「で、でもさすがにスマホは……」
「もうユーザーIDとか綺姫の名前に変えちゃったから使ってくれなきゃ困る」
「で、でも……」
だが綺姫のスマホを見る目はキラキラしていて後一押しだ。綺姫は良くも悪くも顔に出やすい子で、俺は数日でそれを理解していた。
「今日みたいな時にもすぐに連絡が取れるし、俺も安心できるから」
「えっ? もしかして心配してくれた?」
「当たり前さ、今日……学校来なくて凄い不安だった」
一瞬キョトンとした後に少し顔を赤くすると分かったと言ってスマホを受け取ってくれた。ちなみにこのスマホなら位置の把握は容易ですぐ迎えに行ける。きちんと追跡アプリも入っているから安心だ。
「じゃあ明日も学校は休む?」
「うん……明日からテストだからって何度も断ったんだけどさ」
警察側が何としても証言を得たいと言って聞かないらしく綺姫の言い分は完全無視で学校側へ強引にその場で連絡を入れられたそうだ。
「私からも朝、一応は電話しようと思ってるんだけど……」
「分かった、じゃあ早速スマホの出番だな」
そう言いながら俺の中では疑問だらけだ。言い方は悪いがただの下着泥棒だ。窃盗は立派な犯罪だし家も荒らされていたから大事件だろう。だが高校生の女の子一人を長時間拘束するレベルの話ではない。
「ねえ、星明……アタシ大丈夫だよね?」
「大丈夫だよ……明日は警察前まで送る?」
「ううん、私の家に迎えに来るって話だから……家の前に行かなきゃ」
「分かった、じゃあ明日は俺が送って行くよ」
もっと色々と話したいが気付けば日付けが変わる時刻で明日から俺はテストで綺姫は警察で取り調べという大変な状況になってしまい寝なきゃいけなかった。
◆
――――綺姫視点
「じゃあね星明……」
「ああ、何か有ったらすぐ連絡して、では綺姫のことお願いします」
朝一で私に付き合ってくれた星明は家の前に横付けされたパトカーに乗り込む私を見てスマホを示して言った。
「う、うん!! お昼に連絡するね!!」
「待ってるよ」
「じゃあ天原さん」
「はい……」
パトカーに乗せられ星明の姿が遠ざかって行くのを見ながら私は昨日、一番最初に家に来た男女の制服警官さん達に連れられて警察署へと向かった。
「彼氏くん今日は大人しかったわね?」
「あはは、昨日はすいません」
私は昨日、色々と話を聞いてくれた女性警官の熊野さんに謝った。星明が勘違いして突っかかって行ってあれは焦った。
「まあ彼女がいきなり警察に連行されて泣いてたら、ああなるかね?」
そして運転してくれているのは天野巡査で二人はコンビで駅前の交番に勤めているらしい。駅前はよく通るのに全然気付かなかった。
「本当にすいません、彼の顔見たら安心しちゃって……」
「いいな~彼氏くん少し震えてたけど頑張ってたしね」
「昨日ずっと探してくれてたみたいなんです」
「あ~、もうラブラブじゃん羨ましい~」
実際は契約で私は体だけの女なんですけどね……そんなこと言ったら大変な事になっちゃう。でも、この片思いも実ると良いな~とか思っていたら到着していた。署の入り口では私を待ち構えてたかのように昨日の背広を着た刑事さんが二人いる。
「はぁ、朝からご苦労様ね本庁のエリート様と例の企業絡みとか……上は何考えてるんだか」
「偉い人なんですか? エリート?」
星明や四門さんも気にしてたし私自身も情報が今は欲しいと思っていたから思わず二人に尋ねていた。
「一人はガチガチのキャリア、もう一人もキャリアらしいんだけど後ろ盾がね~って、ごめんね天原さん変なこと愚痴って」
「おいおい熊野あんま民間人に話すな、天原さん今のは秘密でね?」
二人に了解で~すと敬礼の真似をしてパトカーから降りると私は背広の刑事二人に連れられ取り調べ室で数時間に渡って話を聞かれる事になる。早く昼になって星明に迎えに来て欲しいと思いながら時間は過ぎて行った。
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