第三章「頑張る二人のカンケイ」
第21話 事件発生 その1
◆
「あっ、その餃子ちょ~だい星明!!」
「いいよ、他には何か追加する?」
俺の言葉に首を横に振りながら最後の餃子を食べ終えると彼女は満足そうに頷いて両手を合わせていた。
「ううん、大丈夫……ふぅ、ごちそうさま~」
「お腹はもう大丈夫?」
「うん!! ラーメン美味しかった、ありがと星明!!」
口の周りを油でテカテカにしているが笑顔が眩しくて何時間でも見ていられそうなくらい綺姫が可愛い。少しニンニク臭いが餃子の後なので仕方ない。なんて思っていたら不意に声をかけられる。
「で? 俺らはいつまでお前ら
「他の客も見てんぞ」
忘れていたが今いる場所は四門さん達の行きつけの中華料理店だ。綺姫の無事を確認してから俺達は四人で今日の経緯を聞くために休憩がてら飯を食っていた。
「じゃあ綺姫、そろそろ今日の話をしてくれる?」
「えっと、その……」
そう言って俺の顔を見た後に四門さんと吾郎さんの顔を見て口を噤んでしまった。話し辛い内容なのだろうと察した。
「一応サツにナシ付けてやったんだ話くらい聞かせろ」
実はあの後、俺の先走った行動が原因で事態が余計に混乱したのだが、それを仲裁し上手く取りなしてくれたのが四門さん達だった。
「綺姫、ごめん今回は……」
「あ、それはいいの逆に嬉しかったし……てか、カッコよかったし」
不様に騒いだだけだった気がするが綺姫がそう言ってくれて安堵した。でも今回は四門さんに借りが出来たので俺は綺姫に再度お願いすると彼女は違う事を気にしていたことが判明する。
「うん……でも、警察から警察関係者以外に話すなって」
「あいつらの口癖だから気にしなくていい」
「綺姫、四門さんは元司法書士らしいから法律とかにも詳しいはずだし、それに無暗に話を広めない人だよ」
そう言いながら俺は四門さんと吾郎さんを見た。吾郎さんは頷いたが四門さんの方はウインクしただけで怪しいが仕方ない。最終的に俺に促される形で綺姫は今日一日を振り返り語り始めた。
◆
――――綺姫視点
星明が言うなら大丈夫だと思う。だから私は少し声を小さくして周囲を確認してから話し出した。
「昨日、星明に家まで送ってもらった後、部屋に戻ると疲れてすぐに眠っちゃったの……で、朝起きて着替えようとしたんだ」
「そんなとこから話さなくても」
何で朝から話すのかは単純で事件が起きたのは朝だったからだ。いや警察で聞いた話ではもっと前からだと言われた。ただ私が気付いたのは今朝だった。
「あっ、違うの星明……着替えようとしたら、その……無かったの」
「無かった?」
「アタシの……ブラとパンツ……」
今の私は顔が真っ赤だと思う。目の前の好きな人に言うのですら恥ずかしいのに赤の他人の前だから余計に恥ずかしいに決まってる。
「ぶっ!? げほっ、ごほっ!?」
「なるほど……下着ドロか?」
隣に座っている星明は盛大に驚いていたけど正面に座る四門さんは冷静に状況を理解したみたい。そして吾郎さんは無言だった。
「うぅ……はい、それもただの下着泥棒じゃなくて私の下着と一部、その……スクール水着とかまで持ってかれて……」
そこで私は朝の惨状を思い出す。私の家は古い二階建ての一軒家で私の部屋は二階だ。今朝も下の階に降りて着替えようとしたら服が無くなっていて別のタンスも調べると他にも何着か消えていて下着の棚を見たら一つも残っていなかった。
「それで慌てて外に出たら、お隣のお婆さんがいて事情を話したら警察呼んでくれて……それで」
その後は先ほどまで一緒にいた警官二名の他に背広を着た警察の人まで来て事情を聞くからと交番に連行され最後は警察署まで連れて行かれた。
「いや待て、ただの下着ドロだろ?」
「は、はい……でも詳しく調べたいって言われて、それに私の通帳も有るし!!」
「けっ、そんな担保にもならねえ貧乏人のはした金なんて狙わねえよ」
そりゃ私は借金代わりに親に差し出された貧乏人だけど酷い。それに私の通帳の中身だって少しは残っている……はず。
「た、確かにそうですけど……」
「四門さん!! それより綺姫、他に盗られた物は?」
「うん大丈夫だった、ハンコと通帳も無事だったよ!!」
星明が四門さんに怒ってるから今回はノーカンにしよう。てか昨日から私より怒ってるし目付きが学校以上に鋭い気がする。そういえば今日の格好は制服姿で髪も下ろしている学校モードでレアだよ。
「良かった……でも四門さんの言うことも気になる、大袈裟だ」
「そうなの?」
「ああ……こりゃ少しきな臭いぞセイメー」
二人の話によると交番まで行くのは分かるけど警察署までは変だと言う。そういうものじゃないのだろうか、そして私は唐突に思い出した。
「そういえば下着や服以外に盗られた物が無いかって何度も聞かれた」
「やっぱ狙いは別件か……少なくとも一件じゃねえな」
「まさか綺姫も被害者の一人だと?」
「ああ、おもしれえ話だ……」
人の不幸が面白いなんて酷いと思うけど星明は心配そうな顔をしている。あれは悩んで心配してる時の目だ。分かるんです私には、だってカノジョ……の振りをしてるから。
◆
あれから三十分、警察の取り調べ並みに色々と聞かれた私と星明は店の前で四門さんから解放された。
「じゃあ吾郎、オメーは二人を送ってやれ俺は調べる事が出来た」
「四門さん、まさか今回の件を調べるんですか?」
「ああ、何が金になるか分からねえからな……情報も金になる」
そんな事を言うと四門さんはタクシーを拾ってどこかに行ってしまった。そして私達は吾郎さんに頼んで私の家まで送ってもらった。そのまま二人で家に入ると私は意を決して星明にある相談をする。
「あの、さ……星明にお願い有るんだけど……いいかな?」
「俺に出来ることなら、なに?」
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