第四十七話 二つは一つ
わたしたちは調査結果をまとめて文章にしたものを持ち、再び発掘現場へと向かった。
「結果が出たぞ」
夏家と秋家の人々と、事の顛末を見届けようと春家と冬家の長老二人も
「おお、ちょうどよかった。春家の長老に渡しておきたいものがあるのだ」
すると、春家の長老は何かを察したように目を伏せ、こみ上げてきた涙をそっと流した。
「知っていたのだな」
「はい。代々、長老となる者に受け継がれてきた伝承にございます。わたしの代でそれが暴かれるとは思ってもおりませんでしたが……。でも、お二人が
すると、長老はおもむろに懐から小さな包みを取り出し、その中からあるものを取り出した。
「それは……」
「はい。初代長老の
夏家と秋家の人々はあまりの出来事に言葉をなくし、青ざめた。
冬家の長老だけは、春家の長老の言葉を聞きながらゆっくり頷いている。
「
春家の長老は一つになった玉札を抱きしめ、嗚咽した。
春家にとってはずっと気がかりだったのだろう。大きすぎる秘密を守ることも、どれだけ大変なことだったか。
「
「で、でも、王家の方々が……」
「
「
「よく護り抜いたな。大儀であった」
「はい……、はいっ!」
春家の長老は涙を流しながら何度も
「実は、そなたに紹介したい者がいてな。彼女の名は、
突然紹介され、わたしは驚きながらも少し前に出た。
目が合う。
すると、春家の長老と冬家の長老が駆け寄ってきてわたしの手をぎゅっと握りしめた。
「あ、ああ、暁の魔女様ですか⁉」
「あ、その、ご先祖様がそうです。わたしは
「なんと!
「あ、ありがとうございます」
「冬家の初代長老は暁の魔女様と
「あの、ありがとうございます」
四季族の中でこんなにもわたしや
ただ、やはり褒めてもらえると素直に嬉しい。わたしの中にまだいるかはわからないが、
まるで感動の再会だ。
そんな和やかな雰囲気に割って入って来たのは、秋家と夏家の長老たち。
「は、春家は王族のご遺体を故意に隠していたのですか⁉ 犯罪、それも大罪ですぞ!」
「春家所縁の物が見つかったのだとしても、土地は渡せませんからな!」
ぎゃあぎゃあと騒ぎ立てている両家に、
姿が人型から、空を覆うほど巨大な白銀九尾の天狐へと変わっていった。
「黙れ! 文句があるのならすべて
夏家と秋家の人々の身体が地面に叩きつけられ、指一本も動かせないほどの重圧をかけられている。
「まだ頭が高いな。埋めてしまおうか」
「
わたしは思わず声を上げていた。
「
「そうじゃなくて! その、みなさんを許してあげてください!」
「許す……?」
「よくわからないのですが、わたしの中の……、
「本当によく似ている。暁の魔女は騒がしい
「わが友の温情に免じて、先ほどの言動は忘れることとする。が、しかし、今後不埒な性格を正さずに行動を起こすようなことがあれば、我が領地より大軍を率いて制裁を加えに来るゆえ覚悟せよ」
「は、はい!」
「も、ももも、申し訳ありませんでした!」
その後、専門家の学者たちを交えた話し合いが行われ、土地は今まで通りの境界線を保持することに決まった。
出てきた遺物の様式が夏家と秋家のものだったのは、
「ちょっと疲れましたね」
「そうだな。巻き込んでしまったが、結果的に
「いえいえ。お役に立ててうれしいです」
「私は? 私もずっと手伝ってたけど?」
「おうおう。竜胆もありがとうな」
「なんか軽くない?」
わたしたちは
おだやかな夕暮れの風が吹く。
疲れて火照った身体が、心地良い涼しさを抱きしめた。
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