第五話 それぞれの立場
手を組むことが決まってから、合計で三度、
そして今日、竜胆を太門がある山林から
「いよいよ明日です、玖藻祭」
「楽しみだね! ワクワクしちゃうよ」
「お仕事頑張りましょうね。
「わお! ありがとう
「姉は
「おお……。それじゃぁ、僕が他の
「ええ。聞きました。『
姉が調べたところによると、十二人存在する
ほかは
竜胆が父親に思い入れがないのも仕方のないこと。彼が生まれてすぐに
「まぁ、そうだね。うん。
「それを聞いてさらに安心しました。では、行きましょうか。わたしの
次元に開けた安定した領域を加工し、個人空間として利用するのだ。
わたしの
竜胆には仕事の期間中、わたしの家に泊まってもらう。
召喚獣というていで精霊種のいくつかを帯同させ、絶えず瘴気が漏れないようする手筈ではあるが、万が一、それがうまくいかなくなることも考えられる。
瘴気は霊感のない人間には劇毒と同じ。多少霊感がある人でも、防ぐ手立てを知らなければ有害には変わりない。
もし瘴気が漏れだしたら、竜胆を
「
「家って言っても、そんなに大層なものではないので、期待しないでくださいね」
「ふふふ! 僕も、いや、私も今日から数日は女の子だもんね」
「……そうです。可愛いですね、その姿」
目の前で変化した竜胆の姿は、どこかの貴族の姫だと言われても疑わないほど可憐で品があり、夜空のような黒髪がとても美しい女性だった。
「
わたしはこの
目の前に現れた美人に不意に褒められても、うまく切り返せない。
「そ、そうでしょうか。でも、着飾ると動きづらくて……」
「動きやすさ重視で選んでいるの? 年頃の女の子なのに?」
「別にいいでしょう。わたしは走りやすい恰好が好きなんです」
「あのさ、敬語やめない? 従妹って設定なんだし」
「ああ……、それもそうか。じゃぁ、遠慮なく」
「そうそう! ふふふ、友達って感じで嬉しい」
浮かれる竜胆の可愛らしい笑顔に苦笑しつつ、わたしは
「じゃぁ、扉を開くから、中に入ってね。家は薬草畑を抜けた道の先にあるから。お風呂とか、台所とか、好きに使っていいよ。百味箪笥には使用頻度の高い薬草は大体入ってる。なんでも持って行っていいからね。呪術道具も魔道具もけっこうあるし、錬金術の道具も必要最低限はそろってるから」
「まあ! 至れり尽くせりね!」
目の前の何の変哲もない
薬草が放ついい香りが漂ってくる。
「素敵ね!」
「あ、ありがとう。わたしは今晩長公主様が泊まる左大臣様の
「はーい。電話なら、西欧に行ったときに数回触ったことがあるからわかるわ」
「よし。じゃぁ、またあとでね」
「うん!」
わたしは入口を閉じ、ふぅ、と息を吐いた。
「着飾る……かぁ」
お化粧も色彩豊かな唐衣にも、興味はある。でも、意味はない。
わたしはわたしの代でこの身に宿る
もう二度と一族の子孫に飛び火しないように。
愛しいひとを思い、胸を高鳴らせることすら出来ないこの身体に、美しい装束も、艶やかな
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