貴方へ
私は、けっして完璧な子ではなかった。
どちらかといえば、駄目な子。
努力は出来ないし、才能もない。
周りから、信用も信頼もされない。
これじゃあ、何をやってもうまくなんていかない。
人生なんてつまらない。
そう思ってた。
毎日、自暴自棄になって寝る前に泣いた。
それで、睡眠時間が減ってストレスで勉強しながら泣いた。
毎日毎日、自分を恨んだ。
それでも、いつだって隣には親友がいた。
灰色の水溜まりみたいな私の心に、小さな小さなそれでいて綺麗なお花が咲いた。
泣いてばかりの私が親友といる時だけは笑顔でいれた。
私の始めての親友。
私の事を信じてるし、頼ってると言ってくれた人。
ずっと一緒にいてくれると約束してくれた人。
なのに。なのに…。
知りたくなかった。
決して知りたくはなかったけど、そんな時に知ってしまったのは。
親友がもうこの世界にはいないんだという絶望感。
何処にいても何をしても会えないんだという心の空白。
あの時、ああしていたら良かったのにという自分への嫌悪感。
不意に訪れた脱力感。
体の糸がぷつんと切れたみたい。
地面に体が飲み込まれる。
言うことを聞かない体は、そのまま脱力して重力に撫される。
そんな時に出会ったのが……。
貴方。
そんな私に、貴方は言ってくれた。
「一生、愛し続けるから。」
一瞬で恋に落ちた。
時を経て愛を知った。
幸せだと思えたのに。
ずっと続くと思ってたのに。
永遠だと信じてたのに。
どうして大切なものばかりが消えていくの。
どんどん惹かれていった。
たまらなく貴方の事が好き。
もう、どうしようもないくらい好き。
この気持ちは抑えきれない。
だけど、また別れはやってきた。
私は、羽を捥がれた天使のように落ちていく。
目の前が真っ暗になる。
何故か涙が溢れてきた。
拭っても、拭っても、拭いきれない。
そんな時、彼に誘われた。
私の事が好きだという彼。
そこは、貴方との思い出の場所。
その日。
彼を見て決めた。
彼と居て、気づいてしまった。
私が好きなのは貴方だと。
貴方しか愛せないと。
どんな人が隣にいようと、私が隣にいたいのは貴方だけ。
だから、貴方に会いに行く。
私を止める彼の腕を振り払い、全力で貴方の元に向かった。
そして貴方に会った。
やっと貴方に会えた。
貴方は無理して笑った。
この気持ちを捨てなくてはそう思った。
そう、シュレッダーにかけられた要らない紙のように。
切り刻んで。
だけど、シュレッダーにかけた気持ちは涙を流したまま。
捨てようとゴミ箱に投げたけど、指先が拒絶して的を外してく。
ごめんね。捨てれなかった。
私が起こした行動に、心を殺す貴方にどうしても伝えたかった。
私の中の誰かが言った。
『本当の愛って何?』
この真実を信じたくなくて、理想の今を思い描く。
だけどエフェクトで加工した今は、ただの空虚な妄想でしかなくて。
なんでだろう。
貴方との間に、とてつもない距離を感じる。
牢獄に囚われたみたい。
貴方はすぐそこに居るのに会えない。
それは、残酷にちぎられた運命を物語っているようで。
私は、何も言わずに走り出した。
迷惑なのはわかってるけど、もうどうしたらいいかわからなかった。
貴方との初デートを思い返していた。
その時の映画のセリフ、貴方は覚えてるかな。
主人公が言った言葉。
『誰にも愛は平等なんだ』
あの時は、胸が熱くなったのに。
今は何故か溜め息が漏れた。
貴方との思い出が走馬灯のように流れていく。
あの時は、幸せの甘さでいっぱいだったのに。
その見返した思い出は、味を無くしてくガムの様。
形があるはずなのに触れられない。
貴方が「ジョークだよ。」って滑稽そうに笑う。
首に手をやる。
いつも通り、ネックレスがある。
手に触れた金属はただの無機質な金属で。
ロケットペンダントにかけた真実は、胸の奥底で叫んでる。
手を伸ばすけどすり抜けてゆく。
答えを捜すのをやめれば見つかるかもしれない。
黒くなった街に蝕まれそうで次第に怖くなってきた。早く逃げなきゃ。
心の奥で貴方にもう1度問う。
『本当の愛って何?』
私は逃げ切れなくて、どんどん蝕まれてく。
体が隅からどんどん崩れていく。
黒くなっていく体とは反対に、心は赤く腫れていく。
赤く腫れた心を治さないと。
私は、汚いものを知っている。
だから、綺麗なものも知っている。
そのはずなのに、今の私の心が汚いのか綺麗なのか区別がつかない。
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