優しくて悲しい言葉

 時間の流れは止まってはくれないもので、果那ちゃんが片想いの相手と少し話せるようになってからは、どうやら順調に進んでいるらしい。

 正直、悔しい。『今日はこんなことがあって』とか、『今度その子を含めたグループで遊びに行くことになった』とか。楽しそうに話している果那ちゃんとぼーっとした気持ちで向かい合う。

 そうでもしていないと、私は....。



 ✱✱✱


「風邪っぽいって言ってたけど大丈夫?」


「あぁ.....うん。最近テストとか課題とかで疲れてたのかな〜....。」

 そう言って私はマスクの下で笑顔を作る。もちろん、果那ちゃんには見えていない。でももしかすると、目元は笑っていないかもしれない。目は口ほどに物を言うというし、何より果那ちゃんは人の感情を読み取ることが上手い。こうやってニコニコ話しているように見えて、実はもう私の気持ちを見透かしてしまっているのでは....?と思ってしまう。


「ほんとに大丈夫?具合相当悪いんじゃ.....?」


「いや、大丈夫。すぐ治ると思うから。」


「そう.....。」

 そんな風に、どこかふわふわしていて掴めないところも好きなところだけれど。


「今度ね、気持ち伝えようと思うの。」

 呟くように果那ちゃんが言った。


「え?」


「だからね、好きな子に告白しようと思うの。」

 一番聞きたくなかった言葉だった。もちろん、この気持ちが叶うとも全く思っていなかったけれど.....それでも、諦めたくはなかった。


「ねぇ、」


「うん?」


「私が果那ちゃんのこと好きって言ったらどうする?」


「え......?」

 目を大きく見開いて果那ちゃんは固まってしまった。私も少し、いやかなり意地悪な聞き方をしていると思った。果那ちゃんは俯いて、黙り込んでしまった。


「嬉しいよ、でも......その子以上に好きって気持ちには、なれない.......かな。」


 とてつもなく優しくて悲しい言葉だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

好きのおおきさ 七瀬モカᕱ⑅ᕱ @CloveR072

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ