魔法少女マジカル・ミミサは変身しない

椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞

変身ステッキを奪われて

 魔法少女マジカル・ミミサは、変身するためのステッキを敵に奪われてしまう。


 まさか先生に化けて、ステッキを没収するとは。

 敵は、相当の戦略家と見える。

  

 しかもよりによって、戦場は教室だ。

 クラスメイトを前にしての戦闘となる。


 さっきマスコットからステッキをもらって、初戦闘だというのに。


 このままでは、生徒を巻き込んでしまう。


「ヘヘェ! 自慢のマジカル・ミミサも、変身できなければただの女子小学生! どうする? まわりはお友だちのガキ! 先生も人質に取っている! どうする?」


 そんなの決まっている。


 ミミサは学習机の下に潜り込んだ。


「ハッハ! 怖気づいブーッ!?」


 そのまま、椅子を支えにして机を相手のアゴに叩き込んだ。

 敵が、窓の外へ吹っ飛ぶ。


 落ちていった怪人を追いかけて、三階から中庭まで飛び降りた。

 

 先生の擬態が解けて、坊主頭のマッチョへと変貌を遂げる。


 そばに、ステッキが落ちていた。


 ミミサは、そのステッキを……。


「さあミミサ、魔法少女に変身す……えーっ!?」


 捨てた。


 しゃべっていたステッキが、リス型のマスコットへと姿を変える。


「悪いがボウヤ、こいつは使わない」


 変身なんて、してやらない。


「わたしからすれば、変身なんてのはハンディキャップにしかならんのだよ」

 

 首をゴキゴキと鳴らしながら、ミミサはモンスターと対峙した。


 一方、ボウズの魔女は怯えている。


 彼女は、ミミサを怒らせた。

 大事な授業を邪魔して、先生を人質に取っている。生徒を危険に晒した。

 なにより、給食の時間前なので気が立っている。

 それだけで、戦う価値はあった。


「おい、マジカルミミサの活動時間は?」

「三分だよ!」

「一分で殺す」

「えぇ……」


 マスコットがドン引きする。


 仕方がない。

 あと一分で給食の時間なのだ。

 さっさと終わらせる。

 


「ヘヘ! やれるもんならやってみ……ぶへええええ!」



 一分間の無呼吸連打。

 足、手、胴体、顔面、どこもお構いなしに拳や蹴りを叩き込んだ。

 体育の授業より、張り合いがなかった。

 クギャ、ゴキ、ドロといった、およそ女児向けアニメでは流せない音声が垂れ流しに。


「浄化じゃない。殺し合いなんだよ……」


 魔法で浄化なんて、生ぬるいことはしない。

 徹底的に痛めつける。

 欠損、破壊、虐殺。

 それが、マジカルミミサの戦闘スタイルだ。

 反撃のすきすら、与えない。

 


「コイツ……変身しないほうが強い!?」


 平べったい状態になって、怪人は圧死した。


「へっ。跳び箱のマットにもなりゃしねえ」


 ミミサは、怪人の死体にツバを吐きかける。


 体育倉庫の扉を素手で強引にこじ開け、縛られていた先生を助け出す。


「ああ、ありがとうミミサさん」

「それより給食だ」


 先生の感謝の言葉に対し、ミミサは腹の虫で応えたのだった。

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