第4話:ずっと


「なんで……」



 あの時私を助けようとして姫衣きいは迷わず海に飛び込んだらしい。

 そして私と姫衣きい一緒いっしょおぼれて助け出された時には……


 姫衣きい永遠とわに帰って来ない人となった。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「お姉さま、海に入らないのですか?」


「私、海ってきらいなのよね……」



 あれから数年が過ぎ後輩こうはいのたってのお願いに仕方なしに一緒いっしょに海に来ている。

 可愛かわいらしい水着にうれしそうにしている彼女。

 私はパラソルの下で手をる。


 彼女は苦笑くしょうを浮かべて海へと向かっていった。



 私は海がきらいだった。

 私から姫衣きいうばったこの海が。



瑠香るか、せっかく優美ゆうみちゃんがさそってくれたんだからさ…… それに瑠香るか優美ゆうみちゃんの……」


 あずさはそう言って私をのぞき込む。


 優美ゆうみと私は関係を持っている。

 それはあずさも知っている。


 でもそれは単に優美ゆうみ姫衣きいに似ていたから……



「私、海ってきらいよ……」



 私はあずさにそれだけ言う。

 あずさは肩をすくめて海に向かっていく。



 きらめくなぎさを見ながら私は一人パラソルの下でずれ始めたサングラスをかけ直す。


 海は静かに波の音をたたせるだけだった……




―― 完 ――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

臨海学校 さいとう みさき @saitoumisaki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ