第1話 私の体積が小さくなった

【タイトル】

第1話 私の体積が小さくなった


【公開状態】

公開済


【作成日時】

2018-09-10 20:02:40(+09:00)


【公開日時】

2018-09-10 20:02:40(+09:00)


【更新日時】

2018-09-10 20:03:35(+09:00)


【文字数】

981文字


【本文(54行)】


 私の指先が縮こまった。秋の訪れだ。


 コンビニから帰る私の視線はポケモンGOへと注がれる。

 身を縮め、ポッポに向けてモンスターボールを投げる。


 近くにある、ポケモンの溜まり場に来ていた。京都の寺社仏閣は駐車場として貸し出している場合が多く、そこは歴史的建築物と空地の融合地帯となりポケモンが溜まり場としてうようよ存在しているのであった。


 夜。外灯の下。縮こまった私は日課のようにその寺へ向かっていった。自転車を転がし、ひとりぼっち。



 縮こまる。


 二年前。急性アルコール中毒で死の不安を味わった。

 そのとき、身体が“縮こまる”という現象に出会った。

 急性アルコール中毒は不安障害を併発し、それはひと月の年月を経てパニック障害へと急転した。


 動かない。


 縮こまり、動けない。


 石のようになった私は、這いつくばるようにかかりつけの医者へと夜中、飛び込んだ。


 それが二〇一七年の五月のこと。

 知能検査の結果、言語理解が131と高く発達障害と診断を受けた。


 時を隔て二〇一八年の五月。私は統合失調症で警察に連行された。

 二か月間、閉鎖病棟に閉じ込められた。



 現在、二〇一八年九月。ようやくパソコンが打てるまでに回復したが、身が縮こまったまま、小さな不安をオーラのようにまとったまま、猫背で生きている。



 そろそろ、人生がおかしい。

 熊本ではトップの高校だったのに。○○高校に受かったのが私の人生の頂点だった。


 そこから二浪を経験し、治ることなき精神病患者に変貌し二十四度めの秋を迎える。



 私は知っていることがある。

 自信をもって言えること。

 あまりにも大きな不安に襲われた時には、他人の手のぬくもりが必要なのだ。

 僕に信じれる人はいない。統合失調症で友人と思っていた人にも裏切られた。何ならすべての人が敵に見えた。集団ストーカーを笑っていたが受けている感覚、被害者の感覚になって初めて分かった。

 この世に陰謀があると言っている人たちは、本気で言っているのだと統合失調症にかかって理解することができた。僕のアパートの人間は、僕のパソコンの画面やスマートホンの画面を逐一チェックしているのではないか、そんな気がする。

 僕が何かするたび、下の階から歓声が上がる。隣の部屋から舌打ちが聞こえる。


 縮こまる。

 秋がやってきた。

 涼しい季節がやってきた。

 ガーディでも捕まえに梅小路うめのこうじ公園にでも遠征に行こうか。

 大学が始めるまで何とか生き残って見せる。




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