6:魔力
見えざる光、万物の祖、沈黙の歌、絶対の理、心より出でて形成すもの、大いなるもの、天からの授かりもの。
これらの言葉はすべて、魔力という単一の概念に対して付けられた呼び名である。
魔力とは、世界のすべてを満たすエネルギーの一種であるとされる。その性質は様々に変化するため、多くの魔術師は魔力の一側面のみを切り取って利用するのが常である。魔力という概念はあまりにも不可思議であり、人の身でそのすべてを理解することは不可能だ。このことは、全知全能を求めた末に己のすべてを失った狂気の探究者たちが、過去に幾度となく証明している。
冒険の大地における魔力は、人々の生活に密着している
だが、誰もが魔力を織って魔術を放つことができるわけではない。ある
魔術師、魔術の使い手となるには、様々な方法がある。どの道を選んだとしても、その過程の根本的な原理は同一だ。まず魔力に触れることを覚え、眠っている魂の手を自覚する。次に魔力を操るために手を動かすことを知り、魔力を我が物とする。そして魔力を織り、己の望む形に変性する術を心に刻み込む。この過程を辿った者を魔術師と呼び、魔術師は己の可能性を追求し始める。剣士が剣を振り己を鍛えるように、あるいは幼子が手の届くあらゆるものに触れようとするように。
どの魔術師も例外なく、己の手に触れるものがすべてではないことを知っている。魔力は常にあらゆる可能性を宿し、その全容を理解するには、人の魂の器は小さすぎる。それでも、人は魔術を操ることをやめない。未知を探究することこそ、人を人とする力であるために。その足跡を書物に残して魔導書とし、己の旅路の跡を辿るものの道標として残しながら。
人が誰しも息をして、魔力に触れて生きるのと同じように、
怪物は殺して生きることを常とする。であれば、その手で操る魔術が極めて危険な凶器であることは至極当然といえよう。時に人の常識を超える力を示し、怪物の魔術は獲物に、そして冒険者たちに襲い掛かる。殺意に満ちたその業に対し、魔術師ができることはあまりにも少ない。人智の及ばぬ蛮行、殺戮のための殺戮、無限に求め続ける異形の魔術には、
だからこそ、魔術師が取る行動はひとつ。叡智をもって、その形成す殺意が生み出す
時として、魔術師の中にこう考えるものが現れる。怪物が生み出した力を模倣できれば、それは人類の大いなる一歩になるのではないか、と。この短慮が、過去に幾度となく新たな怪物を生み出した。そして、魔術師はこれからも幾度となく過ちを犯すだろう。
怪物に何故と問うなかれ、如何にしてと問うなかれ。
ただ決意せよ。戦い、勝利すると。
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