2
「ふぅ」
今度は墓靄が息を漏らす。
その中にどのような感情が潜んでいるのか。誰も知らない。
が、顔を見てわかるのは
「……怖かったです……」
いつも五人が一緒にいてくれた。
守ってくれた。力のない私を。
一度、自分の精場へと入ったことがある。
が、そこにあったのは、無。
何故か私は反対向きに地面に立っており、だが落ちることはないという最悪な状況。
いち早く出たかった。逃げ出したかった。
でも、勇気がソレを邪魔した。
今になっては後悔するほど、愚かな判断だった。
その場所から彼女は右手にある歩道橋へと登り、真ん中の割れ目で止まり、街全体を見渡した。
「きれい…」
本心。
「私に、勝てるのかな」
不安。
「……任されたんだから、やろう」
本心。
そして彼女は、真ん中の階段を降りていった。
一段降りるたびに長く艶やかな黒髪と緩めの黒い服が揺れる。
その絵を見れば誰もがその美貌に堕ちてしまうだろう。
だが、そんなことはしない。
まだ誰にも習っていないから。
一通りの戦闘技術は習った。
素手、武器。
だが言われたのは、精霊を持つ者には九割九部敵わないということ。
最悪の場合死に至るとも。
しかし彼女は諦めなかった。
何も持たない自分にしかできない事を探して。
そのまま歩いて行き、あっという間に大きな十字の広い場所へと辿り着く。
真ん中へと佇み、また息を吐こうとしたその瞬間。
トスッ
不意に、右手の甲に何か違和感を感じた。
まさかと思いそこを見ると、
「……痛っ……」
一本の短いナイフが刺さっていた。
奇襲を受けてしまった彼女はすぐに服の中にある二本の苦無を取り出した。
「ふーっ……」
焦らないで、落ち着いて。
まずは攻撃を防ぐ。
ヒュヒュッ
今度は左右から来たナイフを、
キィン
同時に武器で振り払った。
だが残る違和感、その感触、それが意味するものは、
「まさか……」
相手も無精者。
消しにくるつもりであれば一発で仕留めにくるはず。
ここで墓靄は確信する。
自分でも勝てる相手だと。
そして初めて対等に戦えるものでもあると。
高鳴る気持ちを抑えながら、襲いかかってくる武器を避け、防ぐ。
本気の戦いが始まる。
そう思った。
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