下
その後、30が過ぎた。
女は地面に埋まったまま。
二人は何かをしながら。
「……来ましたね」
「…はい」
先に現れたのは兇のクラだった。
先日とは違い服を着て、頭には一本の黒い簪が刺さっている。
服は大きなスカートのようなもので、ブカブカの筈なのに体のラインは際立っている。
簪で元々長かった髪は後ろで綺麗に纏まっており、まるで子供の頃から付け方を知っていたのかのよう。
「こちらも、ね」
「今日はよろしくお願いします…」
続いて、アカが現れた。
こちらも服を着ており、頭で白い簪が光っている。
服の基調は白で、こちらはドレスのようなモノをモチーフにしている。
簪は髪が短いからか頭に添えるだけとなっている。
「「じゃあ、行く?」」
二人に女から伝えられる。
もちろん場所は伝えられない。
が、二人とも息を呑んだ後、
「「行きます」」
と決心したように言った。
「はい、じゃあ私の手を握って」
アカには左手、クラには右手が差し出される。
ソレを両者は手袋越しに握った。
刹那、地面の彼女の精場へと飛ばされた。
最初に二人が感じたのは、闇だった。
自身らの精場とは違い円という概念がなく、どこまでも横に長い。
理由は明確で、長い机があるから。
縦1席、横19席、合計で40席。
それぞれの間隔がぴったりとあって置いてある。
2席ずつ、間の机の上に二本の蝋燭が置いてあり、ぼんやりと辺りを照らしている。
暖炉の日は青く燃えていた。
「じゃあ、二人とも………って、もう座ってるか」
汚穢が声をかけようとする前に、アカとクラは縦の一席にそれぞれ座る。
その所作だけでも以前の二人とは違うことは明らかだ。
「挨拶、する?」
女が訪ねる。
話し合いの前の挨拶は相手の手調べ、の筈だったのだが…
「今回は、な」
とクラ。
「ですね」
とアカ。
一言にすら満たない会話にも関わらずそうなることを予想していたのか女は、
「はいじゃあ、ここはどこかわかるかな?」
と2人に問う。
「精場」
答えがすぐに帰ってきたところに、女は新たな問題を提示した。
「じゃあ、この椅子らは?」
今度は沈黙があった。
両者口を固く結び、答えを待つ。
「これは、あなたの仲間たちが座る椅子よ」
「「………」」
もう一度聞きたいという衝動を抑え二人は腕を軸にして顔を支える体勢を椅子の上で取る。
「意味がわからないかな、じゃあ説明するね。これから二人が争い合うことは既に感じてると思うんだけど、戦うのはあなたたちだけではありません」
「待ってください、誰が…」
「うん?」
ブワッ
と質問を仕掛けたアカの鳥肌が立つ。
立っている汚穢の背後に、ナニカがいる。
ソレはどこまでも黒く、一本の足で汚穢の肩に乗っている。
この前の恐れもこのせいか。
これは………知らない。
「いえ、何も」
「ならよかった。それで、2人には本を探してもらいます」
「本、ですか?」
とクラ。
「ええ、昔この世の中のどこかに神によって埋められました物。天願受文と呼んでおきましょう」
この世のどこかという広すぎる範囲に二人は驚きながらもまだ仲間というものについての疑問が解消されない。
「仲間は…………、それぞれから見た左側の席19つに座り、その子たちは争いを終えたものから私の精場、ここにくるようにしています」
「…それは、サバイバルですか?」
丁寧に手をあげてクラは質問の機会を伺う。
「いいえ、違います。ある程度の能力が測れたらここにくるようにこちらもしています」
今度は汚穢も問いに答える。
それに対してクラはお辞儀をして感謝の念を示した。
「では、全員が揃ったら本当の争いの始まり、ということですね?」
先程は拒まれたアカだが、
「うん、そう」
とそっけなくだが返された。
「意識を共有するよ」
アカとクラの脳内に大きなスクリーンが登場する。
そこにはこれから戦わんとする者らが映る。
が、人数を数えれば奇数。
二人がそのことを口に出さずに黙っていると、その者の映像の部分だけブラックアウトした。
そして机真ん中から、
「ここ、どこ?」
という声が聞こえた。
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