中
二人は攻撃を行ったのち、徐に歩き始めた。
ただあてもなく、両者間で違う世界を。
「………敵?………」
アカがそう言ったのはどれほど経った頃か。
茂み、砂漠、海を渡り終えて、ようやく一息つけるかと思った矢先に、気配があった。
そこはただの新地で、時々砂が上に舞い上がっていく以外には何もない。
が、唯一の特色としてそこには黒い花が咲いていた。
所々ではあるが着色も施されていないソレは確かに存在感を発揮し、負のオーラを放っている。
「これは、精花?」
アカがそのうちの一本を地面から抜きながらそういう。
大前提として、この世は精で出来ている。
花も、星も、土も、能力も。
この中の能力というのは一つにつき一個とは決まっておらず、その者の技量次第ではいくらでもストックを作ることができる。
そして普通の者は、自身の、「この世に存在しないセカイ」である、精場をもっている。
そこの概形は円。
地面に半径20m程の円が描かれておりソレと一緒に六本の円が内側に描いてある。
これらの中心の点は全て同じであり、半径の長さが同じことはない。
そしてその中心には、精霊がいる。
形はさまざまで、動いているものもあれば、ただの物体ということもある。
この精霊の生まれを知るものはいるのか?
そのことについてはわからないが、自身の力を見極めるには、精場はピッタリなのである。
内側の線に近づけば近づくほど自身の絶対的な精は多くなっていく。
動く条件の権限は、全て精霊が承っている。
ので、能力者の強さは、自身の技量+精霊の技量ということだ。
また、稀に精霊はこのセカイに降隣することができたりする。
降隣とは、セカイに無いものを持ってくるということだ。
セカイに無いものを一から作る時は、降成という。
地面から離れた花は同時に茎から素早く枯れていき、粉々になった。
精をもらう相手がいなくなったからだ。
「黒花は久しぶりですね」
そう言いながら前へと進むアカ。
「この花は」
反対側の同じ世界、兇では、クラが同じように花を手に取った。
「………まだあるのか」
そう唇を噛み締める。
刹那
「「やっほー」」
声。
どこからきたのか?
その答えは、すぐ前を見れば明らかだった。
「………え?」
声の主は、体が半分地面に埋まっていた。
顔、体などを二つに縦に切ったようなその風貌に、二人は唖然とした。
ちなみにアカには彼女の左側、クラには彼女の右側が見えていた。
「私の名前は………」
「「待て」」
両世界の両者が攻撃の体制を整える。
アカは眩いほどの光を腕に巻き付けながら。
クラはどこまでも滅入りそうな闇を地面に手を置き出現させながら。
「話すのをやめなければ、打ちますよ?」
「黙れ、打つぞ」
この言動は両者の性格をはっきりと表しており、だが地面の女は動揺すらもしない。
「ごちゃごちゃうるせーな」
その言葉と共に、二人は動かなくなった。
「最近の奴はこんなんしかいないのか?もっと話通じるやつ連れてこいよ」
「あなた、その話癖は………」
「黙れアカ、言ったよな?」
「………ええ」
スッとアカが腕を下ろす。
「お前もだよなぁ、クラ」
「………はい」
「いつからそんな偉くなったんだ?」
「………」
「まあいい」
「………はい」
こちらもためていた精を霧散させる。
「それでさー、今はあなたに話してるんだけどー、土の下にもう一人いるんだよねー」
「「え?」」
どちらも見える女からしたらさほど驚くべきことでもない。
が、この三人はすぐに悟った。
(これは、争いになる)
「話す?」
そんな女の提案に、予想外の答えが返ってきた。
アカは、
「時が30過ぎたのち、行くと伝えてください」
クラは、
「時が30過ぎたのち、行くとお願いしてくれ」
女は、
「………オッケー………」
と薄い笑みを含みながらそのことを伝え、眠りに入ってしまった。
「………」
「………」
無音が二つの世界に響く。
ここから外側のセカイは兇、内側のセカイは福とよばれることとなった。
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