前章

ある星の一角では鳥が鳴き、ある一つの区画では地面が裂ける。

そんなことが当たり前となった星、光臨。

内にも外にもセカイが存在するここに、変化が、ようやく起こった。



光臨は、ただの星ではない。

丸い星に惑星が半分ほどめり込んだような形状をしている。

そのめり込んでいる、いや、外から見れば出っぱっている惑星はなんなのか。

容貌は黒、所々に穴が開いており、時折キラリと光るものもある。

が、今注目したいのはそこに刺さっている一本の棒だ。

ソレは外側のセカイに垂直に刺さっており、青白く光っている。

そこからは惑星の地面にもまた青白い線が一本出ており、たどることもできそう。  

その青白い棒が、今、変化した。


ズン、と重い音を立てながらゆっくりゆっくり上へと伸びていく。

そこに意味があるようには思えず、ただ単調に、ただゆっくりと動いていくだけだった。

やがてソレが一メートル程伸びたのち、眩く発光を始める。

その色はやがて白へ白へと変化していく。

そのまま純白になるかと思いきや、





ポッキリと根本から棒が折れた。

カランカランと乾いた音を出しながら棒が惑星の坂を落ちていく。

やがて見えなくなったところで、今度はこの世界に、変化が起きた。





「ふぁぁぁぁあ….」

可愛らしい声が生物の存在する内側のセカイに響く。

その声の元を辿ると、地面に落ちていた大きな球体にたどり着いた。

やがてソレは割れ始め、中から姿が見えてくる。

「んー、固い…」

どうやら苦戦しているのか両手を使っても壊すことができていない。

が、根気強く両側へ押していると、ようやく割れた。

中から見えたのは、少女だった。

髪の色は白、服は身につけておらず、肉のついていない顕著な体つきをしている。

もちろん胸も…

少女はそのまま立ち上がり、周りを見回す。

「…ここは、あの星ね」

まるで親から聞かされていたかの如く呟く。

が、真実は彼女の中にしかなく、今は何も知ることができない。

「体は形状を保ってるんだ」

どうやら何者かに送り込まれたらしい。

「でも………もう少し……胸を……」

届くはずもない儚くはずかしい要望を口に出したのちのこと。

彼女は、虚に空を見上げた。

「………アレは………」

光る真ん中の星に目を見張る。

「フン、生きてたのね」

その言葉は嬉しさかただの皮肉か。

「まあいいわ、一発、挨拶よ」

そう言いながら少女は左手を眩く光る星へと向ける。




「んっ………」

低い女声が暗い外側のセカイに響く。

その声の元を辿ると、大きな棺桶が横向きに倒れていた。

やがてその声の主は自身で棺桶の蓋を開ける。

見える腕は肉付きがいい。

多分体もいいだろう。

そのまま蓋をバタンと地面に倒したのは、こちらもまた少女だった。

髪の色は黒、体の肉付きは良くスタイルもいい。

もちろん、胸は大きい。

「…ここは、あの星ね」

先程の少女と同じことを繰り返す、だが違うのは警戒度だろうか。

そしてまた、徐に頭を上げた

「………アレは………」

暗い空の中に見つけたのは更なる闇。

「………」

無言が示すのはただの空白か、それとも…。

そしてこちらも、空へと手を伸ばした。




ドン!




両者は同時に手から白と黒の弾を出し、同時に対象へと当たった。

しかし傷ひとつ負わせることもできなかったのか攻撃が当たった音はセカイに響くだけ。



「あなたは、必ずあたしが………」



「あなたは、必ず私が………」






「「暴いてみせるわ」」



二人の誓いは誰にも届くことなくこだまする。




開戦の鬨は、近くなっている。











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