17
「不和君、この後飲みに行かない~?」
「わりぃ、今日は先約があんだわ。」
またなとバイト仲間の誘いを断った國将は。
夕刻、バイト先のコンビニを後にする。
今日は金曜日な上に、シフトも早めの上がりだったから。國将はここぞとばかりに意を固めた表情を湛え…向かっていたのだ。
勿論、善のいる田代木家に。
(アイツいるかな…)
思えば今日まで連絡先すら交わしていなかったから、確認しようがないのだが。
それならそれで、家の前で待つ覚悟だとして國将は歩を進める。
(どうなんだろなぁ…)
それは國将には未知の領域で。
男相手になんて、それこそ雲の上の話だったものだから。
恋愛に関して選り取りみどりだった彼とて、例外ではなく。余裕なんて代物は存在しなかった。
「あっれ~不和サンじゃーん!最近良く会うね~?」
「チッ…」
途中障害物に遭遇したが…それどころではないのだと、國将は無視を決め込み突き進む。
「なんスか~シカトとかひっでぇじゃないスか~!」
「うるせぇ…今忙しいんだよ。」
それでも付いてくる後輩に、鬱陶しいから消えろと告げる國将。
後輩はわざとらしく頬を膨らませ抗議する。
「え~どうせ暇なんでしょ?飲みにでも行きましょーよ~?」
何も知らない後輩は、しつこく國将を誘ってきて。
國将は仕方なく足を止める。
「あのなぁ、俺は今からアイツのとこに…」
大事な話をしに行くんだよと、告げようとした時。
「あ、善…」
「え?ぜん~?」
バチリと目があった先に、学ラン姿の少年が現れて。
「善…」
「あっ…」
此方に気付いた少年が、スーパーの袋片手に固まる。
「不和サンどうしたんスか?誰か知り合いでも…」
後輩の台詞には応えず國将が一歩、少年の方へと踏み出す。すると…
「ッ……!」
「な…おい、善ッ…!」
予想外にも、善は國将を無視して。
全速力で以て逃げ出してしまうのだった。
思わず目を丸くする國将。
「あのガキがどうかしたんすか?」
後輩の声に、國将は我に返ったが…。
(アイツ…)
走り去る直前、少年の目が苦しげに揺らめいてたのが気に掛かる。
いきなり目の前で、あんな顔を見せられたら…
「上等だよ…」
「ちょ、なんなの?不和サンがあんなガキ相手にマジ喧嘩とか…死んじゃうよ~?」
背後では後輩が、検討違いな事を言っていたが…。
「んん…待てよ…高校生…?」
まさかそれは無いだろと呟く声も、耳に入ってきたが。
(その、まさかだよ…)
とっくに此方は覚悟出来てんだから…と。
その誓いを拳に握り締めて。
國将はどんどん小さくなっていく善の背中を追って、全速力で駆け出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます