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あっという間にコンビニの見える位置まで辿り着いて。





(あっ…いた…)


遠目にも店内にいる國将を認めて、善の想いは一層膨れ上がる。

ここからでも彼がはっきり見てとれるのは…それだけ異彩を放つ容姿だったからだろう。






(やっぱり、格好いいな…)


接客スマイルでレジを打つ様も完璧で。

手際よく袋詰めする作業すら、胸を熱くさせる。


そんな自分が気持ち悪いなとも思ったけど…

今だけはと言い訳して。善はこっそりと彼の姿を堪能した。







(あ…もう、終わりなんだ…)


それもほんの5分程で。

スタッフルームから出てきた別のバイトの青年と入れ違いに、國将も仕事から上がってしまう。


正直もう少し見ていたかったなぁと…至福のひと時に、善はなんだか寂しくなって。

暫くの間、がっかりした様子でコンビニ内をぼんやり眺めていたのだが…。







『國将~!』


聞き慣れた声に弾かれ、その方を見やれば。

今しがたバイトを終え、私服に着替えて出てきたらしい國将がいて。


…その隣りには、やはり姉の姿。

加えてもう一人、金髪の派手な青年もその輪の中にいるようで。


何やら3人、店先の歩道で騒いでいた。





金髪の男には全く見覚えが無かったから。

きっと國将の友達なのだろうど推察する善。


なんだかこうしてコソコソ見てると、悪い事をしてるような気分に苛まれた少年は。更に物陰へと隠れ身を潜めた。








『コレが噂の人?』


その青年が、やけに高いテンションで國将に問うのを。善は耳にし、ドキリとする。





(噂…國将さんが、姉さんを…?)


それが気になってしまい、会話が途切れ途切れにしか耳に入ってこない。





『いや~やっと不和サンの想いが通じたんスね~…』


想い?それはどういう意味だろう?




(國将さんが、姉さんに…それとも姉さんが…)


想いを伝えたってこと?どんな?

頭が真っ白になり、胸の奥底から沸々と黒い感情が沸き上がる。


その間にも会話は続いていて…






『もうっ國将ったらヤキモチ妬いてるぅ~!心配しなくても私は國将一筋よ~!』


姉がそんな事を叫んだ後、当たり前のように國将の腕に抱き付いていた。






(っ…………!)


身内の起こした行動に耐えきれず、善は走り出す。






(きっと姉さんはっ…國将さんに────)


告白したのだと。先程の会話で悟った善は。

走りながら、涙を流す。






(良かったじゃないか…)


大好きな姉の恋が実り、憧れの國将が本当の兄になるのなら。


そう、綺麗事で纏めようとしてみるのに。

涙は止まらないし、心臓の辺りがずっと苦しくて仕方ない。






(もう、諦めるんだ…)


どうせ端から望みのない事だったのだから。

この想いはさっさと捨てて、姉の幸せを願ってあげなきゃ────…






「うっ…くッ……」


ちゃんと笑わなきゃ、でも今だけ…最後にほんの少しだけだから。






「くにまさ、さっ…」


この想いに、浸らせて…泣いてしまうのを許してくれませんか、と…。


少年は宛もなく、無我夢中で夜道を駆け抜け。


途方もない絶望感に。

ただただ涙を流し続けた。

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