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欲に負け、幼気けな少年にあんな事をしてしまってからというもの…。

あからさまな態度を取る善に、國将はなんとなく苛ついていた。





確かに、ちょっとやり過ぎたかなと…帰って自分の処理をした後の頭で、反省はしたけれど。

それでも、無理強いをさせたとは思っていなかった國将。



男にナニを扱かれ、本気で嫌がってれば止めてただろうが…。

善が自分に向けてくるものが、好意であるのは明らかだったし…あの時の少年は寧ろ求めてくれてたんじゃないかと、國将は解釈する。



それこそご都合主義、ストーカーの主張と変わらない気もしたが…。あくまで自身の勘は当たってる筈だと、國将は高を括っていたのだ。






だから最初は、善の不自然さも羞恥心によるものだと思っていた。

罪悪感はあったし、暫くは仕方ないなと敢えて触れずにいたのだが…こうもあからさまだと、さすがに腑に落ちないというのが…本音で。





時間が合えば当たり前のように、田代木家に顔を出す國将。美味い飯を理由に、実は善を目当てに通っているのだが…こういう時に限って大体、姉という名の障害物に阻まれる。


その確率は徐々に上がって…最近では必ずと言って良いほど清子がオマケで付いてきたから。



それもちょっとした不満ではあったのだが…









「國将ったら、私に会いたくて仕方ないのね!」


「あ?違ぇ…って、いちいち抱き付いてくんじゃねぇよ。」


國将が足しげく通う理由を、清子が都合良く捉えるのには慣れたが…。

彼女が鬱陶しのは、今に始まった事じゃあない。

寧ろそれは、







「姉さんと國将さんて、お似合い…だよね…!」


なんて言って無理におだてようとする、善の行動が何より不快で仕方ないのだ。





「でしょでしょ~?なんだったらもう兄さんって呼んじゃえば?」


いずれはそうなる予定だからと。

相も変わらず、ストーカー発言を連発する清子。


それは無視して、國将はじっと善の顔を伺う。






「あ…洗濯物、畳まなきゃ…」


それに気付いた善は、逃げるように國将から目を逸らして。足早に洗面所へと行ってしまった。







「やーん、國将とふたりっきり~!」


調子に乗って腕にしがみつく清子には目もくれず。

國将は善が消えた先を黙って見据える。



嘘が苦手な善だから。

なんとなく意図が読めるのだが…改めてそれを見せつけられると、いい気はしない。


だからといって自分が追い詰めてしまった事も、少なからず要因してるだろうから…下手に干渉も出来ず、國将は内で溜め息を吐いた。







「……帰るわ。」


「え~まだシフトには早いじゃないの~!」


話してもないのに、何故か國将のバイトスケジュールを把握している清子は、もう少しだけと駄々を捏ねるものの…。


國将は相手にもせず、スタスタと玄関へ向かう。







「あ…國将さん…」


そこでやって来た善も一応、見送ってはくれるのだが…。






「じゃあな、善。」


「…う、ん……」


何度その目を捉えようと、國将が努めても。

去り際まで互いの視線がまともにかち合うことは、

一度もなかった。

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