10
欲に負け、幼気けな少年にあんな事をしてしまってからというもの…。
あからさまな態度を取る善に、國将はなんとなく苛ついていた。
確かに、ちょっとやり過ぎたかなと…帰って自分の処理をした後の頭で、反省はしたけれど。
それでも、無理強いをさせたとは思っていなかった國将。
男にナニを扱かれ、本気で嫌がってれば止めてただろうが…。
善が自分に向けてくるものが、好意であるのは明らかだったし…あの時の少年は寧ろ求めてくれてたんじゃないかと、國将は解釈する。
それこそご都合主義、ストーカーの主張と変わらない気もしたが…。あくまで自身の勘は当たってる筈だと、國将は高を括っていたのだ。
だから最初は、善の不自然さも羞恥心によるものだと思っていた。
罪悪感はあったし、暫くは仕方ないなと敢えて触れずにいたのだが…こうもあからさまだと、さすがに腑に落ちないというのが…本音で。
時間が合えば当たり前のように、田代木家に顔を出す國将。美味い飯を理由に、実は善を目当てに通っているのだが…こういう時に限って大体、姉という名の障害物に阻まれる。
その確率は徐々に上がって…最近では必ずと言って良いほど清子がオマケで付いてきたから。
それもちょっとした不満ではあったのだが…
「國将ったら、私に会いたくて仕方ないのね!」
「あ?違ぇ…って、いちいち抱き付いてくんじゃねぇよ。」
國将が足しげく通う理由を、清子が都合良く捉えるのには慣れたが…。
彼女が鬱陶しのは、今に始まった事じゃあない。
寧ろそれは、
「姉さんと國将さんて、お似合い…だよね…!」
なんて言って無理におだてようとする、善の行動が何より不快で仕方ないのだ。
「でしょでしょ~?なんだったらもう兄さんって呼んじゃえば?」
いずれはそうなる予定だからと。
相も変わらず、ストーカー発言を連発する清子。
それは無視して、國将はじっと善の顔を伺う。
「あ…洗濯物、畳まなきゃ…」
それに気付いた善は、逃げるように國将から目を逸らして。足早に洗面所へと行ってしまった。
「やーん、國将とふたりっきり~!」
調子に乗って腕にしがみつく清子には目もくれず。
國将は善が消えた先を黙って見据える。
嘘が苦手な善だから。
なんとなく意図が読めるのだが…改めてそれを見せつけられると、いい気はしない。
だからといって自分が追い詰めてしまった事も、少なからず要因してるだろうから…下手に干渉も出来ず、國将は内で溜め息を吐いた。
「……帰るわ。」
「え~まだシフトには早いじゃないの~!」
話してもないのに、何故か國将のバイトスケジュールを把握している清子は、もう少しだけと駄々を捏ねるものの…。
國将は相手にもせず、スタスタと玄関へ向かう。
「あ…國将さん…」
そこでやって来た善も一応、見送ってはくれるのだが…。
「じゃあな、善。」
「…う、ん……」
何度その目を捉えようと、國将が努めても。
去り際まで互いの視線がまともにかち合うことは、
一度もなかった。
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