6
「あ~今日の飯も美味かったな。」
「ふふ、お粗末様でした。」
善の手料理を遠慮なく平らげた後。
國将は当たり前のようにソファで寛ぐ。
一仕事終えた善も一息つき、彼の隣りにちょこんと座っていた。
何となくつけたテレビを肴に、時折会話を挟む。
画面の中では、善と同年代の子達が互いなにやら持論を展開し、盛り上がっていた。
「若者の恋愛事情ねぇ…俺にはもう遠い日の思い出だな。」
まだ20代とは思えぬ色香を放ち、國将が溜め息を吐く。
「國将さんだって若者でしょう?まだまだ…これからじゃないですか。」
まるで語り口調が、お爺ちゃんみたいだと苦笑する善に。國将はふと己の人生を振り返る。
この美貌故に相当モテていたが…言うほど遊んでいたわけではない國将。
それなりに経験や粗相もあっただろうけれど。
意外にも根は男気溢れるというか…恋愛もまともなものが多かったように思う。
面倒見も良いから、男友達も沢山いたし…。
「なら、お前はどうなんだ?」
「え?ぼ、僕…?」
自分の話は置き去りに、善へと質問を返して。
そうすると少年は困ったよう俯いてしまい。
「僕は、まだっ…その、付き合うとかっ…」
モジモジしながら答える善に。
だろうなと内心でほくそ笑む國将。
こんなに純粋で真面目な性格だったから。
恋愛だのなんだのには疎いのだろうとは思っていた。
「そうか…てことは、善は童貞なんだな?」
「どっ───…!」
わざと意地悪な笑みで善を見下ろす國将。
話題が破廉恥極まりないものなだけに、免疫のない善は判り易いほど狼狽し、赤面する。
「ん?なんだよ…もしかしてキスもまだとかか?」
「ッ―――…!!」
目敏い國将でなくても、答えは明白。
何より善の態度が、その身の潔白を物語っているではないか…。
それでも、國将は敢えて聞こうとする。
善には迷惑な話だろうが、國将は困って赤くなる善が見たくて仕方ないのだから…質が悪い。
「僕はまだっ、高校生だし…」
なんとか答える善に、つい悪戯心が止まらない國将は。
「そうか?テレビじゃ結構ヤッてるみてえだけど?」
指差されテレビを見やれば、まさに高校生の初体験による割合が円グラフで表示された所で…リアルな数値に、善は沸騰して俯く。
「俺も高校時代に済ませちまったからなぁ…お前だって15なんだし。そろそろ何かあっても可笑しくはないだろ?」
善の顔を覗き込み、そう告げると。彼は上目遣いに國将を捉えて。その目が、動揺を露にする。
「…やっぱり、國将さんはシたこと…あるんだね…」
本人に自覚はないのだろうけど。
このタイミングで、こんな風に判り易く落胆されてしまうと…國将としては据え膳か、コレ?なんて都合良く解釈したくなる。
となれば、目の前の少年が意地でも可愛く感じられて。調子づく青年は、より本能に忠実な生き物となるのだった。
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