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「あ~今日の飯も美味かったな。」


「ふふ、お粗末様でした。」


善の手料理を遠慮なく平らげた後。

國将は当たり前のようにソファで寛ぐ。


一仕事終えた善も一息つき、彼の隣りにちょこんと座っていた。



何となくつけたテレビを肴に、時折会話を挟む。

画面の中では、善と同年代の子達が互いなにやら持論を展開し、盛り上がっていた。







「若者の恋愛事情ねぇ…俺にはもう遠い日の思い出だな。」


まだ20代とは思えぬ色香を放ち、國将が溜め息を吐く。




「國将さんだって若者でしょう?まだまだ…これからじゃないですか。」


まるで語り口調が、お爺ちゃんみたいだと苦笑する善に。國将はふと己の人生を振り返る。


この美貌故に相当モテていたが…言うほど遊んでいたわけではない國将。

それなりに経験や粗相もあっただろうけれど。

意外にも根は男気溢れるというか…恋愛もまともなものが多かったように思う。


面倒見も良いから、男友達も沢山いたし…。






「なら、お前はどうなんだ?」


「え?ぼ、僕…?」


自分の話は置き去りに、善へと質問を返して。

そうすると少年は困ったよう俯いてしまい。





「僕は、まだっ…その、付き合うとかっ…」


モジモジしながら答える善に。

だろうなと内心でほくそ笑む國将。


こんなに純粋で真面目な性格だったから。

恋愛だのなんだのには疎いのだろうとは思っていた。






「そうか…てことは、善は童貞なんだな?」


「どっ───…!」


わざと意地悪な笑みで善を見下ろす國将。

話題が破廉恥極まりないものなだけに、免疫のない善は判り易いほど狼狽し、赤面する。






「ん?なんだよ…もしかしてキスもまだとかか?」


「ッ―――…!!」


目敏い國将でなくても、答えは明白。

何より善の態度が、その身の潔白を物語っているではないか…。


それでも、國将は敢えて聞こうとする。

善には迷惑な話だろうが、國将は困って赤くなる善が見たくて仕方ないのだから…質が悪い。







「僕はまだっ、高校生だし…」


なんとか答える善に、つい悪戯心が止まらない國将は。





「そうか?テレビじゃ結構ヤッてるみてえだけど?」


指差されテレビを見やれば、まさに高校生の初体験による割合が円グラフで表示された所で…リアルな数値に、善は沸騰して俯く。






「俺も高校時代に済ませちまったからなぁ…お前だって15なんだし。そろそろ何かあっても可笑しくはないだろ?」


善の顔を覗き込み、そう告げると。彼は上目遣いに國将を捉えて。その目が、動揺を露にする。





「…やっぱり、國将さんはシたこと…あるんだね…」


本人に自覚はないのだろうけど。

このタイミングで、こんな風に判り易く落胆されてしまうと…國将としては据え膳か、コレ?なんて都合良く解釈したくなる。


となれば、目の前の少年が意地でも可愛く感じられて。調子づく青年は、より本能に忠実な生き物となるのだった。

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