第6話過去の悲劇
食堂に全員が集まったなか、田崎は美術部の過去を話した。
「実は去年、美術部の生徒と顧問が自殺したんです。生徒の名は山野理恵。彼女の描く絵は高校生の域を越えていました。山野さんの将来は明るいものでした。しかし、彼女は自宅で手首を切り自殺してしまいました。噂ではいじめがあったとか。加害生徒は見つかりませんでした。対応に当たった顧問の森田先生は責任を取って学校の屋上か飛び降りて亡くなりました。これが、美術部の過去です。わたしは、レスリング部のコーチでしたが、他の先生が美術部を恐れ、わたしが志願しました」
黒井川は頭を掻きむしり、
「分かりました。そんな事があったんですね。よし、これから集団行動をしましょう。絶対、1人きりにならないこと。お風呂も大人と入る事にしましょう」
全員が部屋に籠った。従業員は夕飯の仕度をしに持ち場に戻った。
丸田は、御仏壇の前に正座してぶつぶつ唱えていた。
黒井川は岐阜県警に電話しようとしたが、繋がらない、電話線が切断されていた。
ロビーの公衆電話に向かうと、田崎と生徒数名がいた。
「黒井川さん、電話がつかえないんです」
その電話の線も切断されていた。
「まいったな、陸の孤島になってしまった」
小田切春は震えながらロビーにいた。
「大丈夫だよ。オジサン達が守ってあげるから」
小田切は言葉に反応しなかった。
「ワトソン君、竜神君の死亡推定時刻はわかる?」
「はい。死斑のでかたをみると、死後30分から1時間ですね」
丸田が、
「犯人は外部の人間じゃないのかね?」
「まだ、断定は出来ませんが犯人はこの中にいる可能性が高いです」
「なんと」
丸田はソファーに崩れるように倒れた。
「丸田さん、大丈夫ですか?」
「あ、あぁ」
山本は、
「次々に仲間殺しやがって、おれがぶっ殺してやる」
と言うと、ロビーに置いてあった金属バットを手にして部屋に入り扉に施錠した。
「暗くなる前に皆さん、入浴済まて下さい。田崎先生は小田切さんと和田さんを連れて入浴して下さい。我々は佐々木君と山本君を連れて入浴します」
部屋に籠った、山本を説得させて佐々木と戸川、丸田の5人で入浴した。
全員で夕飯を食べた。さすがに明るく話す人間はいなかった。
「雨が止みましたね。明日の夕方には警察は来るとおもいます」
誰も反応しなかった。
夕飯が終ると、小日向の殺人の時は従業員以外は全員揃っていた時に悲鳴が聞こえたし、竜神の殺人は密室殺人だ。
難問が控えている。
「黒井川さーん」
「どうした?ワトソン」
「丸田さんが狩りに使っている、散弾銃が盗まれたそうですよ」
「なんだって!」
2人は丸田の待つプライベートルームに向かう。
「盗まれた!黒井川君。カギは掛けて鎖で厳重に固定していたんだが、扉を無理やりこじ開けて、鎖は切断された」
「丸田さん、弾は?」
「5発」
「丸田さん、今夜も我々が山荘内を巡回しますから、安心して下さい。散弾銃なんか使かわせないようにしますから」
「ありがとう、黒井川君、戸川さん」
田崎は生徒の部屋をまわり、紅茶を配っていた。
「あ、田崎先生。どうされました?」
「いえ、生徒がこんな目に遭い、少しでも落ち着くように、紅茶を運んでるんです」
「今夜、一晩頑張れば、警察が来ますから」
「はい。戸川さんおやすみなさい」
見回りが終わった戸川は黒井川に耳打ちした。
「あの子ね。なんか秘密を持ってるよ」
「明日、話しをききます?私は皆を落ち着かせる為に、明、警察が来るって言いましたが、後3日はかかりますよ!」
「そうだね。タバコ吸おうよ」
2人は久しぶりに喫煙した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます