第7話 花火大会 《中編》
「あっ!!
「ごめんね!ちょっと遅れちゃった!!」
「いいよいいよ!!私達も今きたとこだもん!っねぇーーー!!!」
きゃはきゃはと笑いながら、普段と違う浴衣姿の女子達はあっという間に蒼月を取り囲んだ。そのままそーっと帰ろうと俺は軍団に背を向けた。よくもまああんな集団に囲まれてニコニコしてられるんだ?アイツは。一抜けられてラッ......、
「沢井君も来てたの?」
聞き覚えのある声に振り返るとそこには予想通り、
「な、なんで天満がこんなところに!?」
「なんでって......。
アイツ、何考えてやがる......っ!!思わずキッと睨みを効かせて見ると、蒼月は右手にピースをつくり、ニンマリ顔をしてこちらを見て笑っていた。
「っ!!アイツ......!!」
「そーだっ!みんなー!俺、いいとこ知ってるんだー!ちょーっとついてきてー!」
「えぇー!!蒼月君っ!すっごぉーいっ!!行く行くぅ!!」
取り巻いていた女子達はしたり顔のアイツに気づかず、ほいほいついて行った。アイツは顔だけこちらを振り返ってウインクすると、さぁ!こっちこっち〜、などと言い、群れのように遠くへと歩いていった。
そしてその場に残ったのは、帰ろうとしていた俺と天満の二人きりになってしまった。なんとなく気まずくなって黙っていると天満が話しかけてきた。
「その服、いいね!インナーの上に黒の半袖ジャケット、それにベージュのワイド目なボトムスって、センス良すぎない??沢井君にすっごく似合ってる!!」
「あぁ、この服は蒼月に無理やり着せられて......、はぁ。いつもはもっと地味なの着てんのに。」
「いいじゃん!似合ってるんだからさ!さすが幼馴染。よく沢井君のことが分かってるんだね。」
こういう時、俺はどういう反応すればいいんだ??さっぱり分からん。ズボンのポケットに手を突っ込むと、何か紙のようなざらざらとしたものが入っているのに気づいた。
『お困りの榛眞へ
俺には予想できますっ!そう!榛眞君、君は天満さんに服装を褒められてきっと対応に困っていることでしょう!!そこでっ!!蒼月君からのアドバイスー!!褒められた時は、褒め返す!!天満さんの可愛い浴衣姿を思う存分褒めるべしっ!!いくら榛眞でも天満さんの浴衣姿はたまらないはずっ!!思ったことを素直に言えばいいんだよ。分かった?
優しい幼馴染蒼月より』
何が優しい幼馴染、蒼・月だっ!!次会った時、覚えてろよっ!!!!!
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