第3話 移ろい
1-Bの一員となって早くも数ヶ月が過ぎた。あれだけ咲き誇っていた桜は影さえ残さず、代わりに青々とした葉っぱが生い茂っている。花とは、本当にあっけない動物だ。
初日にいきなり話しかけてくるようなやつは面倒くさいやつだと相場が決まっている。......と今までの俺はそう思っていた。が、それには例外があるということを俺はこの数ヶ月間で学んだ。
最初の頃、
『あははっ、あはっ、ははははっ!!!
と大爆笑して目尻に涙を浮かべていた。つくづくあいつは失礼な奴だ。あれは一回死んだとしても治らないだろう。
英語の授業中、俺はシャーペンをくるくると回しながらとなりの席をちらりと盗み見た。天満は、思った以上に謎な人物だった。全身かすみ草だらけな外見はさておき、授業中や日常での天満の行動は、何故か違和感を覚えてしまう。
数学や理科系は目をきらきらとさせて先生の話を聞いているが、それ以外の科目......、特に歴史のときはずっと窓の外を眺めている。単なる好き嫌いかもしれないとは思っているが、天満に限ってそんな事はあるはずがない、と囁く俺もいる。かと言って、俺は天満の何を知ってるんだ、っていう話だが。
授業中だけじゃない。他の女子達と話して楽しそうに笑っていても、突然弾かれたように窓の外を仰ぎ見たり哀しそうに目を伏せたりするときがある。情緒不安定なのか何かは知らないが、今まで一度も興味を持ったことのない女子という生き物......、天満の事を心配に思う自分がいることを俺は薄々気が付いていた。
それは蒼月にも気づかれていたようで、昼休みに屋上でご飯を食べている時に突っ込まれることとなる。
「なあなあ榛眞。榛眞さ、最近すごい天満のこと見てるよね!も・し・か・し・て!!榛眞って、天満の事......、」
「は、はあっ!!そ、そんな訳ないだろ!?蒼月はすぐそっち方向に持ってこうとすんな!!だいたいお前はいつも、、」
「あ〜!!はいはい!そ〜ですね〜。」
「おい!おまっ、まだ話終わって......」
「ほっんと、わっかりやすいなぁ。」
「なんか言ったか??」
「いいや、な〜んにも!じゃねー」
しゅたたたた〜、とまるで子ウサギのように蒼月はかけていった。
一人残された屋上で俺は、昼間なのに見える薄い月を眺めた。半分以上欠けているそれはまるで、今まで構築していた根本が崩され変わりつつある俺の思考回路のようだった。
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