第2話 攻略対象の王子ガウリール・ランブール
俺は佐々木正之。大学の漫画研究会でBLゲーム攻略大会をしていたらそのゲームの中にいた。
何を言っているのかわからねーと思うがおれも何をされたのかわからなかった……。
こういう場合なんか女神だかなんだかがチート能力授けてくれるものだとばかり思っていたが、ただ王子ガウリール・ランブールという立場だけ与えられて投げっぱなしである。
ちなみに『ユオリアズリリィ』はR指定なので例の教会のシーンが終わったらアダルトシーンに直行だ。
結婚式のお相手はぶりっ子系アイドル(職業ではなく社交界のアイドルだ)で主人公のライバルでもあるカミーユ・ミスクレスだった。おれはBLネタも嗜むオタクだが、普通に巨乳の女の子が好きだ。
いかに可愛い男の娘が相手でもアダルトシーンは断固拒否したい。
カミーユの役どころは受けとしての心構えをツンデレ調に主人公のユーリ・エッシャーに説きつつ、好感度が足りなければ攻略対象が心変わりするためキャラだ。これキャラを分けた方がヘイトコントロール出来たと思うんだけどキャラ数増やせなかったんだなと感じなくもない。
それはそうとして今現在俺たちはパレードの馬車を乗り捨て、郊外の警備兵を襲って装備や服を奪い逃走中である。
「とりあえず、主人公のユーリを探そう」
「そうっすね。俺もこっちの記憶に主人公がいないんであいつがなんか握ってると思います」
あのぶりっ子カミーユとは思えないほどぞんざいな口を利くのは同じ転生者の狭間昭彦君だ。『ユオリアズリリィ』をプレイしたことはないがお姉さんの同人活動でなんとなくキャラの相関図は頭に入っているそうだ。
王族の結婚式というハレの日なので城下だけではなく街道にも露店が出ている。まだ街道では王子と花嫁が逃げたという情報が出回っていないのか平和な様子である。
ふわりとバターやソーセージの焼ける香りがそこかしこから漂って来る。
「それにしても腹が減りますね……」
「丸一日儀式で食った気がしないよな……」
今日の祝賀会の豪華な食事は見ただけでほぼ挨拶ばかりしていた気がする。
ふと目に留まった露店に真っ赤な林檎が売っている。多少の小銭もあるのでそれを買うことにした。
しゃりしゃりとした食感とジューシーな果汁が相まって美味い。どこの農家が作っているのか気になる……。
「あの、佐々木さん」
「ああ、分かってる」
林檎の木箱に張られているのは主人公ユーリの似顔絵だった。
あの特徴のあるくるんとしたアホ毛と少女漫画ばりに大きな瞳は間違いようがない。
「ちょっとお姉さん、聞きたいことがあるんだけど」
「あらやだ兵隊さん。こんなおばあちゃんに何か用かい?」
露店のおばちゃんに探りを入れる。直接取引してないにしても卸業者なりから辿れるはずだ。
「軍隊で果物の新しい仕入れ先を探しててさ、この林檎美味いから是非推薦させてほしいんだ。その前に生産者の身元を確認したいんだけど……」
「その林檎を作ってるのはカナリー村のユーリって子だよ。若いけど腕がいいんだ」
一発で当たりを引いたおれたちが快哉を叫んだのは言うまでもない。
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