「暑い朝、駅に向かう自分」を描写しなさい(600字)
「いっけなーい遅刻遅刻ゥーッ!」
アタシは袋から食パン一枚取ってくわえ、炎天下へと飛び出した。十二分後の電車に乗り遅れたらアウト。最寄り駅は徒歩二十分、走ればギリギリ間に合うハズ。
さっそく汗で脇がヌルヌルして気持ち悪い。一方、八枚切りのカサカサした食パンが、口のなかの水分を奪っていく。
アタシはそっこーママにラインした。『これ天然酵母のちゃう!』
既読から秒でママの返事、『いつもの売り切れ』
遺憾の意を示そうとスタンプ選んでたら、曲がり角で人とぶつかった。「うぎゃ!」地面にすってんころりん、スマホも食パンも落としてしまった。
「あ痛たたた」
「ごめん大丈夫?」ぶつかって来た男が手を差し伸べてきた。なんとうちの高校の制服だ。
「……全然大丈夫じゃないわ。見てコレ」アタシは地面に落ちた食パンを指差す。「トーストになっちゃってるじゃない!」
灼熱の太陽でフライパンと化したアスファルトにより、食パンはキツネ色を通り越して黒コゲになっていた。
「うわ、ホントだ。そうはならんでしょフツー」
「なっとるやろがい。どうしてくれんのよ、アタシの朝ごはん。このままじゃお昼までもたないって」
「早弁すれば?」
「そんなはしたないマネできるか」
「ワガママだなぁ……」そう言って男子は食パンを拾い、手ではたいた。すると表面の黒コゲが落ちて、にわかに黄金色の輝きを発する。ミダス王か。
彼はそれを一口食べた。「うん、ちゃんと食べられるよ」
――か、間接キスっ!
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