第50話 暑い

 校門に着くなり、先に来ていた芽久美に泣きついた。

「芽久美ぃ~!」

「えっ、な、何?どうしたの!?」

 人目もはばからずに大声を上げた俺に驚いている様子だった。

「断れんかった、てかもっとエロい事された…。」

「エロ…っ!?」

 想像の上を行っていたようで、芽久美は言葉を失った。

「な…、何をされたの…。」

「服の中に手を…。色々揉まれた…。」

 説明するのも恥ずかしく、俺は思わず顔を手で覆った。

「なんでそんなことに…?ていうか、学校で何してんの盛岡先輩…!」

 芽久美もつられて赤面していた。

「と、とにかくここじゃ目立つから、私の家に集合ね。」

「うん…。」


***


 芽久美は冷蔵庫から作っておいた麦茶を取り出し、二人分出しておいたコップに注いだ。

「俺、先輩にはっきり言おうとセリフを練習してたんだ。…でも、部室開けたらいきなり二人きりで。…先輩は着替えてる途中で、その…、腹筋に目が行ってしまって…。」

 振り返るのも恥ずかしくて、俺は途切れ途切れに報告した。

「…俺、どうかしちゃったのかな。断りたかったのに、断れなかった…。」

 芽久美は真っ赤な顔で麦茶をグイッと飲んだ。

「…びっくりしちゃったのよ、多分。」

「確かにびっくりはしたけど、でもそういうのとは別で…。その、あれだよ。“口で嫌と言っても体は正直だな”ってやつ?」

「え、嫌じゃなかったの?」

「…気持ちよかったし……。」

「バカ明楽!」

 耐えきれなくなったのか、芽久美は俺の肩を思いっきり叩いた。

「イッテ!」

「想像しちゃったじゃない!!」

 芽久美は顔を真っ赤にさせて涙目になっていた。

「…えっち。」

「えっちなのは明楽でしょ!!欲に負けてるじゃん!」

「じゃあ芽久美は断れんのかよ!」

「断るよ!明楽は雰囲気に飲まれ過ぎなの!!」

 俺の分の麦茶まで飲み干して芽久美は冷蔵庫に向かった。

「あーもー!暑い!アイス食べる!!」

「俺も食べたい。」

「どうぞ!」

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