第42話 親友
スタバを出たワタシ達は、ゲームセンターに来ていた。
「明楽〜、これ取ってぇ!」
芽久美はおねだりモードになっていた。指さした機械には、今人気のアニメキャラのフィギュアの箱が転がっていた。
「3手で取る。」
「さっすが明楽♬」
クレーンゲームはワタシの数少ない特技の一つだ。芽久美に300円を受け取り、宣言通り3回目のプレイで目当ての箱を落とした。
「やったぁ♡」
芽久美は箱を愛おしそうに抱きしめた。
「私の宝物が増えたよぉ♬」
「それは良かった。」
「明楽は何か取らないの?」
「ん〜、欲しいもの特にな…」
言いかけたが、視線の先に気になるものが見えた。
「…あれ取りたい!」
ご当地キャラのなす丸くんの人形が、愛らしい顔をこちらに向けて寝っ転がっていた。取らないわけにはいかない。
「明楽、ご当地キャラ好きだよねぇ。」
「だって可愛いじゃん!」
芽久美に台をキープしてもらい、ワタシはお金を崩すため両替機を探した。
「両替機、両替機…。」
「あれ?
驚いて振り返ると、そこには楓さんと逸先輩が立っていた。
「やっほ。」
「楓さん!…と、逸先輩。」
「あれ、俺おまけ?」
「あ、いやそういうつもりでは(笑)」
「明ちゃんも来てたんだね。」
「はい、芽久美と一緒に。なす丸くんを取ろうと思って。」
「なす丸くん?」
「大阪府摂津市のゆるキャラです。茄子とカラスを足して二で割った感じで、コロコロして可愛いんですよ♬」
楓さんと逸先輩を引き連れて台に戻ると、芽久美がチャラ男に絡まれていた。
「ねぇ、こんなところで待たせる友達なんか放っといて、俺とマリカしない?」
「もうすぐ来るんでほっといて下さい。」
「またまたぁ。」
「芽久美。」
慌てて芽久美に駆け寄ると、チャラ男に対して強がっていた彼女の顔が安堵で泣きそうになっていた。
「…遅いよぉ。」
小さく呟いてワタシに抱きついた。
「ごめんね。」
「西原、悪かったな。俺たちが引き止めちゃったんだ。」
「…ということなんで、お引取り願えます?」
楓さんがチャラ男に向かって笑顔で言ったが、声色はいつもの穏やかな響きではなかった。
「…ったく、なんだよ。」
チャラ男は悔しがりながらそそくさと去っていった。
「ありがとう。」
「いいよ。それより何もされてない?」
「うん、大丈夫。」
「良かった。」
楓さんは元の穏やかな笑顔と声に戻っていた。
(楓さんでも怒ることあるのか。)
人間であれば喜怒哀楽があることは当たり前だろうが、いざ怒ったところを見るとドキリとした。
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「瀬戸楓、ほんとに男みたいで格好良かったね。」
「だよね!?芽久美がちょっと羨ましかったもん。」
二人と別れてから、ワタシ達は帰路につきながら楓さんの格好良さを褒めていた。
「明楽が男として惚れるのも分かる気がするかも。」
「でしょ。…芽久美も惚れちゃった?」
「まさか!私は身も心も男性の人が好きなの♡」
「あれ、ワタシのことは?」
「えー?そんな事もあったかなぁ〜(笑)」
「なんだか複雑(笑)」
口ではそう言ったが、やっと芽久美と裏表無しで付き合えている気がして嬉しかった。
「芽久美に好きな人が出来たら相談してね。」
「いいよ、相談してあげる♬明楽も、なんかあったら溜め込まずに相談してね?」
「うん、ありがとう。」
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