第41話 気のせい

 昨日は芽久美の様子に違和感を感じていたが、今日は一緒にショッピングに行くと以前と同じように感じた。

「明楽、このチュニックどうかな〜?」

「…えっ。」

「だーかーら!こっちのピンクが良いか、それとも白がいいかって聞いてるの!」

「ごめん、ぼうっとしてた…。季節的に白かな。」

「…もしかして、この前のこと気にしてる?」

「そりゃぁ…。」

「もう気にしないで、私はもうそういうの言わないって言ったでしょ?」

 芽久美はなんだか吹っ切れた様子にも見えた。

「…本当に?」

「くどい!」

「ごめん。」

「これからは、幼馴染兼親友としてよろしくね?それとも、親友も嫌?」

「まさか!…そう思ってくれて嬉しい。」

「じゃあ元気だして!私が虐めたみたいじゃない。」

「ごめんね?」

「まーた謝ってる。バツとして私にスタバ奢ること!」

 いつもワタシに甘えてばかりだった芽久美が、なんだかしっかりして見えた。もしかしたら、これが本来の彼女の姿なのかも知れない。


「トロピカル マンゴー パッションフルーツ & ティー フラペチーノと和三盆 アーモンドミルク フラペチーノエクストラホイップ一つずつ。」

「かしこまりました!」

 いつもの店員がにこやかに対応し、商品を用意してくれた。

「お待たせいたしました!」

「ありがとう。」

「…あの!」

「はい?」

「いつもありがとうございます。」

 確かによく利用しているが、改めてお礼を言われたのは初めてだった。

「ど、どうも。」

 席を確保していた芽久美にトロピカルを渡すと、彼女はニヤニヤした。

「明楽ちゃ〜ん、君ほんと最近モテるわね?」

「どういう事?」

「カップ見てみたら?」

 促されてカップを見ると、手書きで”今日も素敵です♡”と書かれていた。

「ファッションのことでしょ。それにあの子女の子だよ?」

「ゲイ告白してきたあんたがそれ言う?百合の子だって別に珍しくないよ。」

「い、いやでも…!」

 そんな特殊恋愛体質がホイホイ居てもおかしいだろ。そう思いながらレジの女の子を振り返ると、ガッツリ目が合った。彼女は慌てて視線を逸したが、その頬はほんのり赤くなっていた。

(…気のせいだと思うけどな。)

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