第40話 いじられキャラ

「もう平気なのか?」

「はい。ご心配おかけしました。」

 体調は戻っていたが、大会で悪化した足のせいで筋トレのみの参加になった。逸先輩は俺の足を押さえながら、腹筋の回数を数えていた。

「腹筋終わったやつから外周な〜。」

「うーっす。」

 柊部長の号令で、腹筋を指定回数終わった者から走り始めた。

「アキラたんはマネージャーの手伝いね。」

「はい。」

「俺も手伝おうか?」

「手伝いは一人で十分~。」

 部長は名残惜しむ逸先輩を引っ張って外へ走っていった。


「石井くんって、なんか可愛がられてるよね。」

 3年マネージャーの百井先輩がウォータージャグにスポーツドリンクを入れながら言った。

「え、そうですか?」

「うん、隆之介くんなんか特に目に入れても痛くないってくらい可愛がってる。」

 俺は百井先輩から空になったペットボトルを受け取り、中身を洗った。

「そうかなぁ。柊部長は皆に優しいですけどね。」

「…そうだね。」

「でもどうして急にそんな事を?」

「別に深い意味は無いよ。石井くんは愛されキャラだなって思っただけ。」

「愛されキャラかぁ…単順にチビだからイジられてるだけですよw」

「あはは。」

「え、否定してくださいよぉ!」

「否定はしなーい(笑)」

 百井先輩と談笑していると、外周を走り終えた逸先輩と部長が水分補給にやってきた。

「あらあら。アキラたん、マネまで口説いちゃって〜。」

「え!そんなんじゃないですよっ。」

「ふふふ。」

「いや百井先輩、否定してくださいよ。」

「照れちゃって〜。」

「うわっ、この人裏切ってきた!」


***


 明楽と百井のやり取りを、逸は黙って見ていた。それに気づいた柊は、こっそり彼に耳打ちした。

「…ヤキモチぃ?」

「別に。」

「やっぱ希望が見えてくると欲が出てくるよねw」

「だっ、だから違うって!」

 口では否定しつつも、逸の心は穏やかではなかった。

あいつ明楽が本当に俺に対してときめいたのか確かめたい…。)

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