第43話 LINE

 “今日は芽久美を助けてくれてありがとうございました!”


 LINEを交換して初めてメッセージを楓さんに送った。以前にも何度か送ろうと思ったが、何を書いていいか分からなかった。今日はお礼を言いたかったのもあり、自然体の文章が送れたと思う。

 暫くすると既読が付き、返事が返ってきた。


“どういたしまして。あの後も大丈夫だった?”

“はい!絡まれることなく、なす丸くんもゲットしました!”

“それは良かったね!ところで、敬語やめない?私たち同じ歳だし(笑)”

“あ、了解です!”

“です(笑)”

“了解!(笑)”

“名前もさん呼びじゃなくていいからね。私も明ちゃんって呼んでるんだし。”

“じゃあ…楓ちゃん?”

“どちらかというと呼び捨ての方が気が楽かな。でも呼びやすい方でいいよ。”

“楓…はちょっと緊張するし、最初は楓ちゃんでもいい?”

“もちろんいいよ。”


「ほんとはちゃん呼び嫌なんだろうなぁ…。」

 でも、呼び捨てはまだ勇気が出なかった。


“楓ちゃんは、女子高ではどんな感じなの?やっぱり女の子にモテモテ?”

“そうなりがちではあるね(笑)でも私だけじゃなくて、ボーイッシュな子は皆モテてる。”


 本人は謙遜しているが、楓ちゃんの独壇場だろう。黄色い声で騒がれているのが容易に想像できる。


“秋には学園祭あるし、芽久美ちゃんと一緒に遊びにおいでよ。”

“うん!楽しみにしてるね♪”

“明ちゃんは何校なの?”


 そういえば考えていなかった。芽久美と同じ高校は逸先輩とも同じになるので却下だ。


“えっと、昇竜高校、だよ。”


 とっさに出てきた候補がこれしかなかった。

(山路さん・・・・は俺の恋路応援してくれるって言ってたし、いざとなったら話合わせてもらおう…。)


“へぇ、昇竜高校なんだ。部活は何してるの?”

“吹奏楽部だよ♪”

“そうなんだ。あ、だから歌が上手いんだね!”

“上手いかなぁ(*ノωノ)”

“うん、やっぱり楽器をやってると音程も取りやすかったりするの?”

“あんまり関係ないかな。だって、芽久美も吹奏楽だけど音痴だから(笑)”

“なーんだ。歌教えてもらおうと思ったのに、残念(笑)”

“歌上手くなりたいの?”

“うん。逸にいつもバカにされるんだよね。だからあんまり人前で歌わないようにしてる。”


 以前“人前で歌うのに慣れてない”と話していたのはこのためだったのか。

(そんなに気にしなくてもいいのに。)


“楓ちゃんの歌声、私は好きだよ。”

"本当?そう言ってもらえると嬉しい。”

“今度二人で行かない?逸先輩も居ないから気楽に好きなの歌えると思うんだけど。”

“行く!明ちゃんの歌を聞いて勉強する(笑)”

“真面目だなぁ(笑)”


 自然な流れでカラオケデートを約束できた!男の姿では中々勇気が出ないが、女同士と思えばハードルは低かった。

「あーぁ、本気で女になりたくなってくる(笑)」

 その後も他愛ない話をしながら夜は更けていった。

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