第35話 電話
「…はぁ。」
学校は欠席になったものの、問題が先延ばしになっただけだった。
(相談できる人間が居ないのが痛いな…。)
逸先輩には昨日のこともあるから言いづらい。三上は…問題外。じゃあ瀬戸さん?それこそ言えない。
「あ。」
スマホの画面をスクロールしていると、ある人の名前が目に止まった。
「…この人なら、きっと全部分かってくれる。」
***
「…ん?」
ホームルームを終え、科学室へ移動している途中でスマホが震えた。
”幼馴染に、ゲイであることを告白しました。”
「ほぁ!?」
思わず送信元を確認した。
(え、ちょっと待って。何故俺に!?ていうか
色々と気になることはあるが、後輩が頼ってくれているのは確かだった。
「…悪い、お腹痛いから保健室行くわ。先生に言っといてくれる?」
クラスメイトに伝言を頼み、柊は屋上に向かった。
電話をかけると、思ったより早く声が聞こえてきた。
「も、もしもし。」
「しもしも〜!」
『部長、授業は…?』
「サボった!アキラたんこそ、電話に出るってことはサボり?」
『俺は…今日学校に居ないっす。』
後輩の声にいつもの元気は無かった。
「ありゃ。そんなに思い詰めてどうした〜。幼馴染って、いつも一緒に登下校してる子だよね?」
『…はい。』
「カミングアウトしたら引かれたの?」
『…何も言わず帰っちゃいました。』
「きっとびっくりしたんだろうねぇ。」
『…傷つけてしまった。』
「どうしてそう思うの?」
『ずっと、俺のこと好きでいてくれたのに…それに応えられなかった。』
スピーカーから聞こえてくる声は鼻声になっていた。
「んー…。仕方無くない?」
『え。』
「だって、幼馴染であって恋人じゃなかったわけでしょ?」
『まぁ…そうですけど…。』
「たとえ恋人だったとしても添い遂げる義務はないし、そんな決まりがあったら俺日本から飛び出しちゃう。」
『はは。』
「大切な人だから傷つけたくないのは分かるけど、嘘をついてたら今以上に傷つけることになる。だから、アキラたんの選択は間違ってなかったよ。」
『…そう、ですかね。』
「アキラたんにとって大切な人なら、相手にとってもきっとアキラたんは大事な存在だろうし、時間はかかるかも知れないけど分かってくれるさ。例え分からなくても、分かろうとしてくれるはずだよ。」
『…部長が言うと説得力がありますね。』
「でっしょ〜?元気出た?」
『はい、ありがとうございます。』
「良かった。…落ち着いたところで聞いてもいい?」
『何でしょう?』
「ゲイって、ほんと?」
『あっ…はい、多分ですけど…。』
「多分?」
『その…密着しても幼馴染にはなんとも感じなかったから。』
「それだけ?」
『…逸先輩にはドキッとしました。』
「マジ!!あいつ何したん!?」
『えっと…壁ドン?』
「ほぇー!やるなぁwwアキラたんはそれにドキッとしちゃったわけだ。」
『…誰にも内緒ですよ。』
「スグルっちにも?」
『だって、好きな人がいるのに困らせちゃうじゃないですか。』
「なんで?絶対喜ぶのにw」
『部長楽しんでるでしょ。』
「恋バナは楽しいに決まってんじゃん♡」
『それに俺、瀬戸さんのことが好きですし。』
「でもスグルっちにドキッとしちゃったんでしょ?」
『はい…。』
「ひゃー!恋愛楽しんでんね〜!!」
『ち、違います!!先輩はあれです、その…』
「性的に興奮した?」
『う…、はっきり言いますね…。』
「当たり前じゃん、何のために電話してると思ってんのw」
『俺って、ふしだらですかね…。』
「普通じゃない?俺だって仲の良い女の子に突然くっつかれたらドキッとしちゃうし。アキラたんは男がその対象だからドキッとしたってだけでしょ。」
『…そっか。』
「それにしても、あの文章だけ見たら何事かと思っちゃったよw」
『すみません…、他に話せる人居なくて。』
「センシティブな問題だもんね。」
『…山路さんにこれ話したら締められそうだし。』
「あはは!確かにw地獄の果てまで追いかけてきそう。」
『部長、ありがとうございます。』
「いいえー、力になれたなら良かった。今日はゆっくり休んで、明日また元気な顔見せてよ。」
『はい。』
通話を切ると、ホーム画面に部活メンバーの集合写真が浮かび上がってきた。
「青春してんなぁ〜!」
ゴロン、と寝転ぶと、空に浮かぶ雲がモクモクと膨らみながら移動していた。
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