第33話 傷心
大切な人を傷つけてしまった。明楽はこの先どうしていいか分からなかった。
(今まで通りなんて、いかないもんな。)
芽久美とは、5歳の頃からずっといつも一緒だった。芽久美の両親が離婚した時も、明楽が女装に目覚めた時も。悲しい時も楽しい時も常にそばに居て、それが当たり前だった。
(高校だって、あいつ成績そんなに良くなかったのに無理して俺と同じ高校を受験して…。)
それは全て自分への好意がそうさせていたのかも知れない、そう思うと苦しかった。
(他の誰を振るより辛い…。)
明楽にとって芽久美は親友であり家族のような存在だった。
(あいつが居なきゃ俺は女装の楽しさを知らなかっただろうし、もしかしたら恋愛だってどんなものか分からないまま一生を過ごしていたかも知れない。)
彼女が明楽に与えた影響は大きかった。
(こんなの、誰に相談したら良いんだよ…。)
裏表無しで相談できる相手は、もう居なくなってしまった。
***
翌日、雨はあがっていた。しかし明楽の体は重く、まるで昨日降った雨を全て体が吸い上げたのではないかと思うくらいだった。
起床時刻になっても起きる気になれず、チクタクと時計の音に耳を傾けていた。やがて階段を登ってくる足音が聞こえ、部屋の前で止まったかと思うと次はノックが聞こえてきた。
「明楽、どうしたの?」
母の問いかけに応じる気力もなく、ただただ布団に包まっていた。返事がないので部屋に入ってきた母だったが、俺の顔を見るなり慌てた。
「どうしたの!?顔真っ赤じゃない!」
熱を測ると、40度の高熱であることが判明。当然、学校を休むことになった。
(…なんで俺が寝込んでるんだよ。)
芽久美の方が辛いに決まっている。彼女を差し置いて熱を出す自分が情けなかった。
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