第28話 勘違い

 朝に乗ったバスに再び乗り込み、俺たちは帰路についた。

今朝同様、道中は皆お菓子を食べたりカードゲームしたりと好きに過ごしていたが、和やかなムードの中、逸先輩だけが難しい顔をしていた。

「先輩、山路さんと会ってからずっと難しい顔してますね。」

「そりゃ仕方ないさぁ、会いたくなかった元カレだもの。」

 部長はグミを頬張りながら肩を竦めた。

「善くない別れ方だったんですか?」

「まぁ。スグルっちが他に好きな子出来たからって別れたんだけど、”納得出来ない!”ってカケったん凄い怒っちゃって。会う度嫌がらせしてくるようになったんだよね。スグルっちが悪いとは言え、限度ってものがあるじゃん?」

「好きな子って、部長のことですか?」

「ブッ!」

 グミが変な所に入ったのか、部長はげほげほと咽た。

「なんで俺なんだよw」

「いやぁ、先輩のことよく知ってるし。」

「そりゃ中学んときからの付き合いだからね。あいつらが付き合いだしたことを最初に知ったの俺だし。」

「へぇ〜。」

「とりあえず、スグルっちの好きな子は別にいるよ。」

「部長は誰か知ってるんですか?」

「もちろん。」

「誰だろ?」

「それは〜…本人に聞いてみたら?」

「…もしかして、瀬戸さん?」

「ブッブー。あいつは女の子に興味無いよ。楓ちゃんも和花ちゃんも対象外。」

 和花ちゃん。今日知りあったばかりだけど、先輩のことが大好きなことは凄く伝わってきた。そんな彼女も対象外だということに少なからず同情した。

「和花ちゃん、先輩がゲイだってこと知ってる感じでしたね。」

「うん、何度もフラレてるからね。」

「そうなんですか!?」

「そう。でも諦めないんだよね、あの子。」

 部長は遠い目をして答えた。部長も可哀想だと思っているのだろう。

「…部長は恋愛対象男なんですか?」

「え!?俺は女の子大好きだよ。」

「あ、そうなんだ。…意外。」

「え、何?アキラたんには俺ってそういう風に見えてた!?」

「だって、俺や山路さんのこと”たん”付けするし、先輩のこともなんか可愛いあだ名で呼んでるし、どことなくカマっぽい喋り方だし。」

「やだ〜ん!違うわヨ!」

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