第27話 山路さん

 大会は昇竜高校が優勝し、俺達の高校は3位。MVPは山路さんだった。

「山路さん、凄い人なんですね。」

「…チビの割にジャンプ力もフィジカルも強いからな。」

「確かに力強かったかも。」

「ごめんな、俺のせいで。」

「先輩のせいじゃないっすよ。…いや、先輩のせいか(笑)。」

「あっ、お前遠慮するってことを知らねーのか?」

 逸先輩に小突かれていると、後ろから棘のある声が聞こえてきた。

「目の前でいちゃつかないでくれる?」

「山路さん!MVPおめでとうございます。」

「君に言われても嬉しくない。」

「せっかく祝われてるんだからお礼くらい言えよ。」

「ふん。」

 試合中は覇気のせいかキツく見えたが、ジャージに着替えた山路さんは小さくて可愛らしい見た目だった。髪は色素が薄く猫っ毛で、ポイントマッシュなヘアスタイルがよく似合っていた。

「なるほど、和花ちゃんが”逸兄ぃは可愛い人が好き”って言ってた理由がわかりました。」

「和花がそんなこと言ってたんだ。」

「山路さん、和花ちゃんの事も知ってるんですね?」

「しょっちゅう逸にくっついてたから、嫌でも知ってるよ。」

「それで喧嘩したこともしょっちゅうだ。」

「へぇ。」

 こうして二人が並んでいると、確かに恋人だった名残が感じられる。

「…どうして二人は別れたんですか?」

「えっ。」

「俺から見たら、二人はお似合いに見えますけど。」

「明楽くんって良い奴だね!試合中は意地悪してごめん。」

 お似合いと言われたからか、山路さんは機嫌よく俺の手を握った。

「…意外だな、ゲイに抵抗がないなんて。」

「いやぁ…、最初はびっくりしましたけどね?」

「楓が好きなんだから抵抗なんてないでしょ。」

「そ、そっか…。」

 先輩はなんだか複雑な表情をしていた。

「僕は君の恋、応援するよ。困ったことがあったら何でも相談して?あ、LINE交換しよっか。」

 上機嫌な山路さんは口を挟む間もなく俺とLINEを交換し、逸先輩に向き直った。

「明楽くんも言ってたけど、なんで僕と別れたの?」

「……。」

「別れる必要、無かったんじゃない?」

 ニコニコと聞く山路さんに対し、先輩は黙ったままだった。

 沈黙が続くなか、外の部員が支度を済ませてやって来た。

「お・ま・た・せ☆」

 柊部長がスキップで山路さんと先輩の間に入ってきた。

「柊さんってほんといつでもウザいよね。」

「ありがとう〜、褒めてくれて嬉しい。さ、バスが俺たちを待ってる!帰ろうぜ。」

 部長は大げさに先輩の背中を押した。

「あんなのが部長とか信じられない。」

 山路さんは大きくため息をついて去っていった。

(あれ、もしかして逸先輩、部長と…?)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る