第26話 元カレ
「かっ、彼氏って、誰のですか…?」
「はぁ?話聞いてた?頭悪いの?」
「まぁまぁ。今の話は普通に誰でも驚くでしょ。」
「え、えっと…。」
「あーもーほんと鈍い!!僕は!逸の!元彼氏なの!!あんまり元カレ元カレって言わせないでよねっ。」
7番…改め山路さんは地団太を踏みながら叫んだ。
「でも、男同士ですよね…?」
「だから何。」
「いや…。」
頭が追い付かない。この人が、先輩の彼氏?冗談にも見えないし…。
「驚くのも無理もないさ。アキラたん、ゲイを見るのは初めて?」
「は、はい…。」
ゲイなんて漫画やテレビの中だけの話だと思っていたし、俺には関係のないジャンルだと思っていた。それがいざ身近な人がゲイだと知って、驚かないわけがなかった。
「…その反応ってことは、別に逸のこと好きな訳じゃなさそうだね。」
「おっ、俺が先輩を…!?」
そんなこと考えたこともなかった。でもここで強く否定し過ぎても失礼というか…。
「当たり前だろ、こいつは楓のことが好きだし。」
俺が返答に困っていると、先輩が代わりに答えてくれた。
「あぁ、あいつ。…でもあいつが好きってことは、男の見た目に抵抗がないってことだよね?」
山路さんは眉間にしわを寄せて距離を詰めてきた。
「逸に手出したら今度こそ容赦しないから。」
「そ、そんなことしませんよ…!」
(というか、そもそもそんな考えに至らないから!!)
・
・
・
足の具合が思ったより悪かったため、残りの試合は見学することになった。
(はぁ、瀬戸さんに良い所見せられなかったな…。)
「あいつが好きってことは、男の見た目に抵抗がないってことだよね?」
ふと山路さんの言葉が蘇ってハッとした。
(俺、瀬戸さんの格好良い所が好きなんだよな。最初は勘違いかと思って、美人だからだって言い聞かせてたけど…。)
一目惚れした瞬間だって、彼女を男性だと思いこんで狼狽えていた。
(もしかして、俺もゲイだったりする…?否、でも女性だって知った今でも瀬戸さんのことは好きだし…!)
瀬戸さんに好かれたい気持ちは変わらない。でも、それは男としてだろうか?
(そう言えば俺、瀬戸さんに可愛いって言ってもらった時凄く嬉しかったっけ。)
思えば、彼女に格好良く見られたいと背伸びすることが今まで無かった。
(俺、瀬戸さんに可愛く見られたいのかな…。って事は俺オカマ?でも、瀬戸さんは女の子だし…。)
「あー!!全然わからん!」
突然叫んだものだから、隣りにいた谷垣先生はびっくりして座ったまま小さくジャンプした。
「ど、どうした!?」
「あ。…すみません、何でもないです。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます