第23話 苦戦
ゲームがスタートしてから5分が経過した。ボールは終始相手チームが制しており、俺たちは何とかゴールを入れさせまいと防御に徹するしかなかった。
(なんだこのボール支配率…!?)
すぐにカットできると思っていたパスも中々取れず、シュートを防いでもこぼれ球すら取れずにいた。
「アキラたん7番に付いて!!」
7番、先ほどジャンプボールを担当した選手だ。
(低身長には低身長ってことか!)
すぐに7番のマークについたが、彼はニヤリと不敵な笑みを浮かべたかと思うとキュキュッと体を捻り体制を変えた。
「パス!」
7番にボールが渡り、彼は俺と対峙した。
「君が明楽くんか。」
「えっ。」
相手が自分の名前を知っていたことに怯み、ガードをし損ねた。
「明楽!!」
逸先輩の声でハッとした時には、既に3ポイントシュートを決められた後だった。
相手チーム優勢のまま試合は進んでいき、一回目のインターバルを迎えた。
「あのチビ、ガチでやべぇ!」
「小回り利きすぎじゃね、てかあいつのボール支配率が尋常じゃない!」
チーム内ではそんな声ばかりが上がった。
「明楽。」
「先輩、あの7番何者なんですか?」
「…あんまり無理してあいつに付くな。まだ足痛いんだろ?」
瀬戸さんと出会った時に捻った足が未だに痛んでいた。
「でもあいつ担当って言われたし…。」
「いいから。試合はどうせ負ける。」
「えっ。」
いくら相手が強いからと言っても、最初のインターバルで諦めるとは早すぎる。
「先輩、やっぱおかしいですよ。」
逸先輩の返事を待たずして、試合再開のホイッスルが鳴った。
(ジャンプボールの時に部長もなんか険しい顔してあいつと話してたし、なんか気になるな…。)
第2Qが始まった。俺は部長の指示通り引き続き7番に付いていた。
「君もしつこいね。」
「部長の指示なんで。」
「へぇ、自由気ままな君たちには似つかわしくない作戦だね?」
「…。」
7番は少しでもボールを取れるよう、俺を引きはがしにかかった。
「あはは!ここまでおいで~♪」
「くっ!」
得意の小回りで逃げ回る7番。追いつこうとする度に右足に痛みが走り始めた。
(こいつ、俺のテーピングに気づいてわざと同じ回り方して…!?)
痛みで動きが鈍り始めたのをいいことに、7番は一気に俺を引き離しパスを受けた。
「ご馳走様~!」
そのままドリブルを押し進め、レイバックシュートを決めた。
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