第21話 試合と出会いと疑問

 俺たちの気ままなプレイスタイルは、プロには通用しないだろうが学生のチームには中々効果があった。

 型にはまっていない分パターンが読めず、相手が作戦を立てづらい状況を作っていた。

「良いね良いね〜!特にスグルっちとアキラたん♬」

 ハーフタイムに部長は上機嫌で褒めてくれた。

「凸凹コンビがタッグを組むとやっぱ相手はボール取りにくいみたいだね。でもたまには俺にも活躍させて〜?(笑)」

「えー、どうしようかな。ぶちょーにボール渡すと一人で突っ走るし?」

「一回くらい気持ちいい思いさせてよぉ。」

「なんか響きがやらし〜。」

「スグルっちが欲求不満なだけだぁよ☆」

 特に作戦らしい作戦もなくハーフタイムが終わった。


 最後まで自由気ままな俺達のプレイスタイルに相手チームは振り回され、第1試合は62対91で俺たちの勝利となった。

「いや〜楽しかった!面白いくらいパスが通るんだもんなぁ。」

「アキラたんの低い位置からのパスは慣れるまで時間がかかるからな。」

「なんで逸先輩まで俺のことアキラたん呼びしてんすか。」

「いいじゃん、ノリよ、ノリ。」

 次の試合まで少し時間があるということで、俺と逸先輩は応援ベンチに向かった。

「今日楓が応援に来てんだよ。」

「え!?なんでそれを早く言わないんですか!」

「だってそれ言ったら緊張するだろ?」

「…まぁ。」

 先程のバッシュの事を思い出し、心が暗くなった。

「逸兄ぃ!」

 応援席に着くと、急に女の子が駆け出して先輩に抱きついた。

「おー、和花も来てたんか。」

「もちろん!逸兄ぃの活躍見たかったもん♬」

 俺が呆気にとられていると、瀬戸さんが駆けてきた。

「第1試合お疲れ様。石井くん、活躍してたね!ピンクのバッシュ使ってくれたお陰ですぐ分かったよ。」

「せ、瀬戸さん。ありがとう。」

こいつ目が悪いからさ、いつもバッシュの色で誰か見分けてるみたいなんだ。」

「あー…、それで。」

 俺を見分けるために選んでくれたのかも知れないと思い直すと、先程までの心の影は何処かに消えていった。

「…ところでその子は?」

「あ、この子は私の妹の和花。」

 瀬戸さんが紹介すると、彼女は先輩に抱きつくのをやめて俺に向き直った。

「妹の和花です。いつも姉と逸兄ぃがお世話になってます!」

 ハキハキと話す和花ちゃんは、瀬戸さんとそっくりな凛々しい眉をしていた。

「え、いや…お世話になってるのは俺の方だよ。」

(流石姉妹、やっぱり雰囲気似てるなぁ…。)

 女の子らしい恰好をしたら、瀬戸さんはこんな感じになるのだろうか。そんなことをぼんやり考えていると、和花ちゃんは俺の顔をまじまじと見た。

「…逸兄ぃが好きそうな人ですね。」

「え?」

「逸兄ぃ、可愛い人好きだから。」

「ちょ!お前余計なこと言うなっ。」

「???」

 先輩は慌てていたが、俺には意味がよくわからなかった。

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