第18話 あっさりの逸

「今日はありがとう、楽しかった。」

「こちらこそありがとう…!カラオケ、付き合わせてごめんね。」

 瀬戸さんは結局一人では歌わず、皆で合唱したり他の人の歌を聞いて過ごしていた。

「ううん、言い出したのは逸だし。それに皆の歌聞くの楽しかったよ。」

「それなら良かった…。」

「皆気をつけて帰れよ!」

「盛岡先輩って、明楽以外には結構さっぱりしてますよね。」

 帰ろうとする先輩に芽久美が言った。

「そうか?」

「そうですよ、今日だってハーレム状態なのに誰も帰り送ろうとしないし。」

「西原は送って欲しいのか?」

「そういうわけじゃないですけど…。」

「なんじゃそりゃ。じゃあいいじゃん?帰ろうぜ。」

 そう言うと先輩は一人で帰っていってしまった。

「…いつもあんななの?」

「うん、私は特に見た目が男だから。逸、昔から好きな子以外にはそっけないよ。」

「へぇー。誤解を与えたくないみたいな?」

「多分、そんな感じかな?」

 そう言えば先輩の恋愛論みたいなものを聞いたことがなかった気がする。

(面白そうだし、今度聞いてみよっかな。)

「それより二人は帰り大丈夫?送っていこうか?」

「え!」

「私見た目は男だから防犯になると思うんだよね。」

「だ、大丈夫。ワタシと芽久美、家が近いから。」

「そう?」

「大丈夫だって言ってんじゃん。」

「芽久美っ。」

「あはは。大丈夫なら良かった、気をつけてね。」

 芽久美の悪態を気に留めた様子はなく、瀬戸さんは今日も爽やかに去っていった。

「あいつ、スルースキル高いね。」

「だからってキツく当たり過ぎだから!可哀想じゃん。」

 瀬戸さんを庇うワタシに、芽久美は口を尖らせた。

「女装の姿なら好きになってもらえるとでも思ってる?正体バレて気まずくなるのは目に見えてるのに。」

 ワタシが瀬戸さんとLINE交換したことをよく思っていない様子だった。

「そんなんじゃないよ。ただ…境遇が似てる気がするから話を聞いてみたいだけ。」


***


「おかえり、お姉ちゃん・・・・・。」

 楓が家に帰ると、待ち構えていたかのように妹の和花のどかが出迎えてくれた。

「ただいま。」

「今日も逸兄ぃと遊んできたの?」

「遊んでたんじゃなくて買い出し。でも、途中で友達と出会って4人で遊んだよ。」

「…男友達?女友達?」

「女。」

「逸兄ぃハーレムじゃん。」

 和花は楓の言葉にがっかりした。

「大丈夫、逸は女に興味ない・・・・・・から。」

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