第15話 女同士

 土曜日、部活終わりに芽久美と待ち合わせして街をぶらぶらすることになった。

(ちょっとの間だけど、やっぱ女装するのとしないのとでは気分が違うな。)

 装いを改めて多目的トイレから出ると、既に芽久美は来ていた。

「あれ、今日は吹奏楽部休み?来るの早いね。」

「ううん、普通にあったよ。学校で着替えてきたからその分早かったのかも。」

 元々の性に合った服装なら、そうした方が早いだろう。

「明楽が学校で女装してたら、大騒動だよねw」

 芽久美はどんな想像をしているのか、くくっと肩を震わせながら笑った。

「絶対誰にもバレたくない。」

「明楽のこの姿を知ってるのは私と明楽の両親くらいだもんね?」

「……。」

 瀬戸さんならこの姿を受け入れてくれるんじゃないかとも思ったが、男装と女装のハードルはかなり高さが違う。

 宝塚の影響か、女性が男性の装いをすることにあまり抵抗がない人が多い。しかし逆となると、どうしても好奇な目で見られがちだ。

(瀬戸さんはこの姿を見てどう思うかな…。)

「あの女子校の人にも見せてみる?」

 ワタシの思考を読み取ったのか、芽久美は意地悪く言った。

「芽久美って、性格悪いよね。」

「なんでよー!?」


 気を取り直してスタバに向かった。

「ストロベリーフラペチーノ、エクストラホイップください。」

「かしこまりました!」

 先日対応してくれた店員が愛想よく接客してくれた。

(よし、今回も女装はバレてない。)

「明楽はクリーム好きだよねぇ。」

「うん、幸せな気持ちになるからね。」

「ふーん?」

 芽久美は頬杖をついてワタシを見つめた。

「明楽って、ほんと可愛い。」

「ありがと。」

「…大好き。」

「えっ。何よ突然。」

「突然じゃないよ、ずっと好き。」

「そりゃどうも。」

「ほんとに伝わってるー?」

「伝わってるよ。ワタシも芽久美大好き♬」

 小首を傾げて笑顔で答えた。芽久美はそんなワタシの可愛さに悶た。

「カワっ…!!」

「あんた、ワタシの姿好きすぎない?ベタ褒めじゃん。」

「だって好きだもん、しょうがないじゃん♡」

「男の明楽とどっち好きー?」

「今の明楽♡」

「相当だねw」

「ねーぇ、一口ちょうだい?」

「またー?」

 断ろうとも思ったが、女装を褒めてもらえたので許してやることにした。

「少しだけだからね?」

「わーい!ありがと♡」

 嬉しそうにフラペチーノを飲んでいる芽久美をよそに外の景色を眺めていると、丁度逸先輩と瀬戸さんが通りがかった。

「!!」

「あ、盛岡先輩と女子校じゃん。」

「瀬戸さんって言いなよ!」

 二人も店内に入ってきて、それぞれ注文していた。

「おーい!」

 存在を気取られたくなかったワタシを無視し、芽久美は二人に声をかけた。

「ん?西原か。奇遇だな。」

「先輩はデートですかぁ?」

「違うよwいとことちょっと買い出しだ。」

 そう答えると、先輩はワタシに視線を移した。

「この子は…。」

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