第13話 対面

 芽久美の家を出てダッシュした俺たちは、肩で息をしながらバスに飛び乗った。

「はぁ、はぁ…間に合ったぁ。」

「いい加減時間に余裕のある生き方しろよ。巻き込まれる俺の身にもなってくれ。」

「ごめーん。でも、この状況楽しんでるんじゃないの?」

「楽しんでない。」

「えぇ〜。」

 憎まれ口を叩きながら視線を移すと、前の座席に瀬戸さんが座っているのが目に入った。

「瀬戸さん。」

 声をかけると彼女は直ぐに気がついて振り向いてくれた。

「あ、石井くん。おはよう。」

「おはよ。今日は遅いんだね?」

「うん、寝坊しちゃって(笑)」

 しっかりしてそうだけど、瀬戸さんでも寝坊することがあるのか。どうせ起こすなら芽久美ではなく瀬戸さんを起こしたい…。

「知り合い?」

「あぁ。瀬戸さん。逸先輩のいとこなんだ。」

「瀬戸楓です、よろしく。」

「…西原芽久美です。」

 爽やかに挨拶する瀬戸さんとは対象的に、敵意むき出しな表情で返す芽久美。

「おい、なんて顔してんだよ…。」

「明楽がデレデレしてるからでしょっ。」

「べっ、別にデレデレなんかしてねーし!」

「あはは。二人は付き合ってるのかな?」

 芽久美に対し嫌なを顔せずに対応してくれる瀬戸さん、神対応過ぎる。

「付き合ってないよ!ただの幼馴染。」

「”ただの”は余計だっつーのぉ。」

 俺たちのやり取りを見て瀬戸さんは笑った。

「仲が良いんだね。」

「はい、とーっても仲が良いの!」

 芽久美は見せつけるように俺の腕にしがみついた。

(やめろぉぉぉ!誤解されたくない!!)

「なんか羨ましいな。甘えられる相手が居て。」

「え…?」

 瀬戸さんが呟いて直ぐにバスがひなげし女学園に到着した。

「じゃ、私はこれで。二人共行ってらっしゃい。」

「あ、あの…!」

 最後に呟いていた言葉が気になったが、聞く前に彼女は行ってしまった。

「……。」

「あの人、女子校なんだね。…だからこの間ここを興味深げに見てたんだ。」

「…だったらなんだよ。」

 芽久美は俺と目を合わせようとせず、後方の女子校を見つめながら言った。

「あの人のこと好きなんだ?」

「あぁ、好きだよ。悪いか。」

「……だから私に自立して欲しいんだ。あの人と、一緒に登校したいから。」

「なんだよさっきから。言いたいことがあるならはっきり言えよ。」

「…あの人、きっと男に興味ないよ。」

「そんなのわかんねーだろ。」

「……。」

 芽久美は未だに掴んだ俺の腕を離そうとしなかった。

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