第10話 イケメン過ぎる

 バスケの試合が来週あるということで、明楽は予備のバッシュを買いに靴屋に来ていた。

「いらっしゃいませ〜。」

 店員の声を浴びつつ、明楽はまっすぐコーナーへ向かった。お気に入りはasicsだ。

(どのバッシュにしよっかな…。黒地に金のラインか、それとも思い切ってピンクのにしようか…。)

 二種類で迷っていると、人の気配がした。店員かと思い振り返ると、思いもよらない人がそこに居た。

「瀬戸さん!」

「こんにちは。」

「ど、どうしてくぉこぬ…っ。」

 驚きとときめきでついつい噛んでしまった。

「あはは、そんなに慌てなくても(笑)。」

 瀬戸さんは今日もメンスファッションで決めていた。アッシュグレーのセットアップの中に白のトレーナーを着て、髪は出会った時と違ってウエーブがかったマッシュヘアーになっていた。

「髪、切ったんだ。」

「うん、さっきね。パーマは校則で禁止されてるから、コテで巻いてもらったんだ。」

「相変わらず格好良いな…。」

 見とれていると、彼女ははにかんで頬を掻いた。

「そんなに見つめられると照れるなぁ…。」

「あっ、ご、ごめん!…すごく、似合ってる。」

「ありがとう。バッシュ買いに来たの?」

「うん、来週試合があるから予備をね。どっちの色にしようか迷ってる所なんだ。」

「そうなんだ…。」

 彼女は俺の持っていた靴を交互に見て、ピンク色のバッシュを指さした。

「石井くんは可愛いの似合いそうだし、こっちの方が良いんじゃないかな。」

「えっ、そ、そう…かな?」

「うん。それに、ピンクなら遠くからでも石井くんだって分かるし、応援する人にとっても良いかも。」

「じゃあ、これにしよう。」

 彼女が選んでくれた色だ、気に入らないわけがなかった。

「良いの?私が選んだやつで。」

「うん、どちらかで迷ってたし。選んでくれてありがとう。」

「どういたしまして。それじゃ。」

「あれ、靴を見に来たんじゃないの?」

「ううん、たまたま靴屋に入っていく石井くんが見えたから入っただけ。」

(それだけで入店したの!?)

 俺は胸キュンが止まらず、つい店を出ようとする瀬戸さんを呼び止めてしまった。

「ま、待って!」

「うん?」

「…折角だし、す、スタバ行かない?その…予定がなければ、だけど…。」

 なんとも辿々しい。我ながら童貞丸出しな誘い方で恥ずかしくなった。

「うん。いいね、行こう。」

 瀬戸さんは大して気に止めていない様子で、笑顔で申し出を受けてくれた。

(あぁぁぁ…、やっぱり好きぃぃ!!)

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る